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ミルワの到達距離は3ブロック。

2016年08月22日(Mon)

ところでライトというものは、二次減衰するものである。

いきなりなんだと思われたかもしれないが、日頃ウダウダと考えていることの取りかかりとして、少し確認しておきたいことができたので。

光というものは電磁波であり、揺らぐ場そのものであり、その伝播そのものが時空……すなわち距離と時間を定義する。

確かそんなだったと思う(逃)。

この電磁波というやつは、別のものにエネルギーを持っていかれない限り、どこまでも進む。いつまでも進む。なにせ宇宙の始まりからいまだに進んでいる。

いやでも、実際離れたら弱くなるよね? と思ってしまうのが、いわゆる逆二乗の法則というやつである。だいぶにも書いたかもしれないけども、図にするとこんな感じ。

160822-01

光源から離れると、離れたぶんだけ光は広がっていく。同じ光の量が、より広い面積に照射されるから、一区画だけを見れば光の当たる量は少なくなるのだ。

距離が倍になれば面積は4倍になる。一区画あたりの光の量は1/4。距離が3倍になれば面積は9倍。最初の地点での明るさの1/9になってしまう。だけど、いつまで経っても0になることはない。

だから本来、Poserのポイントライトやスポットライトに終点距離が存在するのは、物理的におかしいんである。旧来のPoserのライトは減衰の始まる地点と完全に0になる地点を設定し、中間の明るさを均等割りしていく。それは直感的にはわかりやすいかもしれないが、物理的に素直な計算をしようと思うと、どうしても障害になる。

そういうわけで、PoserではIDLが実装されたバージョン8で、ようやく二次減衰を扱うことができるようになった。

160822-02

距離が倍になれば明るさが1/4になるライトである。しかしこれは実際に使ってみるとなかなか調整が難しく、妥協の産物のように明るさが距離の反比例になる反比例ライトというのも同時に追加されている。

160822-03

さて、それでは「距離が倍」というのはどういう意味だろう。もちろん基準というのはなんでもよくて、例えば1メートルの距離で明るさが1なら、2メートルの距離では0.25になる。それはわかっている。知りたいのは、Poserのライトは強度が100%のとき、いったい「どの基準で100%になるのか」という点だ。

じゃあ測ってみよう。

160822-04

シーンの中央にポイントライトを一つだけ設置する。色は白、強度は100%。で、それに照らされる真っ白な板を用意する。鏡面反射その他のパラメータはちゃんと0にしておく。この板をライトから離していけば、どんどん暗くなっていく。その色つまり輝度で、何パーセントの光が板に当たっているのかを測定する。

簡単のために、背後に別の板を配置する。こちらは拡散反射も鏡面反射も0、環境色と環境値だけが設定された「発光する板」だ。この板はライトの影響を受けず、どの距離どの向きにあっても同じ明るさに見える。環境色を白にして、環境値を0.25にする。この発光する板と照らされる板の明るさが同じになったとき、照らされる板はちょうど「基準の倍の距離」に位置することになる。

なんで100%の明るさでやらないのかというと、白飛びしてしまってわかりにくいからである。あと、ガンマコレクション機能を使うとレンダ結果に「人間の目の明るい歪み」をかけてしまうので、FireflyのガンマコレクションOFFの状態で確認する。

表1: 表面輝度とスポットライトの照射距離の変化
表面輝度 [%]66.750.025.020.011.1
ライトからの距離[PU]1.231.422.002.253.00

結論から言うと、「たぶんそうだろう」と思ってPoser単位で測ったら、そのまんまだった。

つまりポイントライトやスポットライトは、1Poser単位の距離にあるとき設定された強度そのままの明るさで対象を照らすライトである、ということだ。

ところで1Poser単位は8.6フィートである(ちっ)。8.6フィートは2.62メートル。つまり二次減衰する100%のライトは、2.62メートルより近い距離にあると、とんでもなく色飛びする強烈なライトということになる。近いと目茶苦茶明るいくせに、離れると一転、急激に暗くなる。

160822-05

最近はガンマコレクションを使う人が多いだろうし、Superflyではオフにするという選択肢がないので、この曲線にガンマ補正をかけてだいたいこんな感じ。

160822-06

暗い部分が持ち上がるから、減衰がゆるやかになっている。

で、明るすぎる部分を調整するには、もちろんライトの強度を落とすわけだけども。具体的にどれぐらい変化するのか、ガンマ補正2.2、距離をメートルに直してプロットしてみた。

160822-07

明るさが10%でも、1メートルの距離ではまだまだ明るいようだ。逆に、5メートルを超えるあたりからは変化がなだらかになる。つまり補助ライトを当てるときは、対象から5メートルぐらいは離してやらないと、ちょっとの変化で明るさがやたらと変わってしまうというわけだ。逆に十分に距離をとってやれば、その値はだいたい見当がつく、ということになる。

はたして。

160822-08

理論に裏打ちされた妄想癖、っていう。



Comments

以前から

私も「どの基準で100%になるのか」と言うのを知りたいと思っていました←嘘のようだが本当です(T_T)
実際は適当に見た感じで強度を決めているのでは、と言うとその通りなんですが(T_T)
でもそう言う訳で興味深く拝読しました。

NHKの宇宙番組で日本の観測者が、すばる望遠鏡で最も遠い銀河団の光を捉えたと放映してました。
そんな宇宙初期の遥かに時空を超えた光が地球まで届くはずはない、変だ信じられないと思っていたのですが、kyotaroさんが(なにせ宇宙の始まりからいまだに進んでいる。)と言うからには確かにそうなのでしょう。
だとすると終点距離が存在するのは確かに変ですね。

環境色と環境値だけが設定された「発光する板」を使った対比で、強度を理解するというのは、50%程ですが理解できました。
う~む美しい数式と美しいグラフ・・・
ま、まあその程度の理解度ですが、補助ライトを使うときは5メートルぐらいは離すというのを肝に銘じて置きます(>_<)!

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sannzi #u2lyCPR2
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Post Date
2016-08-23
Post Hour
22:17:51

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そんなに悲しい顔をなさらないで~><

>sannziさん
気になりつつもそのままにしていることって、日常的に結構ありますよね。たまに考え事をすると気になりだして、なかなか集中できなかったりします(笑)。

宇宙の話はロマンがありますよね~。観測のニュースを聞くたびにわくわくします。
いつまでも進む光はちょっとイメージしづらいでしょうか。たとえば宇宙空間に放り出された宇宙飛行士は、どこかの星に引っ張られるか、小惑星にでもぶつからない限りどこまでも等速度運動で進んでいきますよね。光もガスに吸収されたりブラックホールに曲げられなければ、エネルギーを失う理由がない……と考えてみるとか。宇宙自体が広がってるので引き伸ばされてはいますが、なくなりはしないんですよね。

発光する板を使ったのは、目安にするためです。漠然と測るより、指標になるものがあった方が気持ちが楽なので(笑)。グラフはOS付属のグラフツールです。数式を打つとそのまま描画してくれるので、ややこしい式をイメージするのに役立ちます(笑)

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Kyotaro #NWbyPjWY
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Post Date
2016-08-24
Post Hour
23:17:02

Edit

今日は明るい顔で、

→(*^。^*)
一番上の逆二乗の法則の図はとても分かり良いです。
初期銀河団の光もこのように分散されて、地球に届く量は少なくなると考えて良いのでしょうか。
だとするとやはり100億光年をはるかに超える距離から逆2乗して届いた光を、すばる望遠鏡が捉えたというのは途方もないことだと思います。

Name
sannzi #u2lyCPR2
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Post Date
2016-08-25
Post Hour
21:11:04

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^^

>sannziさん
そういうことですね~。あとはまあドップラー効果で思ってたより波長が長くなってるとか、そういうことはありますけども。
ほんのわずかな光を逃さないための設計や観測の工夫といった話を読むと、本当に現代科学がいろんな方の多大な努力によって支えられてるんだなあと思いますね。

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Kyotaro #NWbyPjWY
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2016-08-27
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02:35:39

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数字とグラフと数式が並んでいるのをふんふんと眺めている自分カッコイイ

‥‥とりあえずAさんの意訳でだいたいのことは把握しました。

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rose #4SZw2tfw
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2016-08-29
Post Hour
20:34:49

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グラフが通じなくても幻光が通じるアナタが素敵

まあなんにせよ、「近づけ過ぎない」が基本ということで(笑)

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Kyotaro #NWbyPjWY
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2016-09-01
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21:08:28

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