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ガンマのはなし その3

2011年06月19日(Sun)

というわけで今回はモニタの調整(補正とかキャリブレーションとも言われる)について。このへんの話は検索すればすぐに解説サイトが見つかるから、ウチでやる必要はあんまりないかなと思わなくもない。とはいえ、うっかり微妙なサイトにリンクを貼ってしまったりするのもどうかと思うので、今回からちょっと寄り道して色関係の話に触れていこうと思う。

6. モニタの調整

モニタのキャリブレーションは、厳密にやろうとすると結構面倒くさい。モニタの明るさを計測する専用の機材やソフトが必要になってくるからだ。けど、そのテのものは出版や映像分野のプロが使うのであって、素人が趣味でグラフィックを扱う分にはあまりこだわらなくても問題はない。第一、厳密な調整が必要なほど高性能なモニタを使っている人はそう多くないはずだ。

Mac OSXならモニタの調整はシステム環境設定の「ディスプレイ」→「カラー」→「補正...」で行うことができる。Windowsも7からはOSの機能として調整機能がついたらしい(7は触ったことがないので未確認)。それ以前のWindowsユーザは、ビデオドライバに付属しているツールやAdobe PhotoshopのオマケのAdobe Gamma、フリーのツールなどを使おう。最悪、モニタが輝度とコントラストとガンマを操作できるなら、ひとまずの調整は可能である。

具体的な調整方法はツールによってマチマチなので、以下原理的な部分だけ。

まず最初に考えるのはモニタの置き場所だ。モニタに光が当たった状態では正確な色はわからない。窓からの光や照明の光が入らないようにする。もちろん自分の目にも入らないようにする。モニタにフードカバーをつけることも必要かもしれない。

次に調整を行う時間。昼と夜とでは部屋全体の明るさが異なる。普段パソコンを使っている時間帯にするのがいいだろう。CRTモニタは暖まるまで明るさが安定しなかったりするので、電源を入れてから何十分かはスリープさせずに放置しておく。モニタそのものに輝度などの調節機能がついている場合、まずはシステム設定やツールのようなソフトウェアの調整機能をリセット(つまり何も調整してない状態に)してからモニタを調節するといいだろう。ハードで大まかに調整してから、ソフトで微調整するほうが効率がいい。

あと肝心なのが、なるべく目が疲れていない時に調整すること(笑)。

調節する項目は輝度(明るさ)、コントラスト、ガンマ、色温度だ。輝度とコントラストの調整は図で表すとこんな感じになる。

輝度とコントラストの調整

なので、まずは輝度を調節して黒を合わせることから始める。

黒から白までの階段状グレースケール

コントラストをできるだけ上げた状態で、上図のグレースケールの左端がぎりぎり判別できるぐらいに輝度を合わせる。まったく黒潰れしてしまうと輝度が低すぎるし、余裕で見分けられるぐらいだと高すぎる。ぎりぎりを目指そう。

輝度が高すぎる、低すぎる

次にコントラストを調整して、グレースケールの右側白い部分がかろうじて区別できるぐらいを目指す。完全に白飛びしてしまっているとコントラストが強すぎるし、全然余裕だとコントラストが弱すぎる、ということになる。

コントラストが強すぎる、弱すぎる

これで黒(0.0)と白(1.0)が合ったことになる。

で、いよいよガンマを合わせる。ガンマを合わせるには下図のような図を使う。ガンマのことを調べていたら、大抵お目にかかるガンマチャートだ。

1.6から2.4までのガンマチャート

この図を使って、横線と灰色の部分の明るさが同じになるようにガンマを合わせればいい……というのはよく耳にするが、これは一体何をしているのだろうか。

輝度とコントラストを調整した現時点で、明るさが確定したのは0と1の部分のみである。それ以外の灰色の部分は、モニタのガンマ値が不定なのでまだ正確ではない。そこで、0と1を使って明るさが「物理的に0.5」の縞模様を作っておく。たとえば合わせたいガンマ値が2.2の時、入力されるデータが何%のグレーならモニタに出力される明るさが「物理的に0.5」になるだろうか?

前々回の式に代入してみよう。

出力y = 入力xγ
入力x = 出力y(1/γ)
x = 0.5(1/2.2) ≒ 0.729

入力が0.73、つまり「データ上の73%グレー」が「物理的に0.5」と同じ明るさに見える時、そのモニタのガンマ値は2.2であるということになる。ガンマ値を1.8に合わせたいのなら、68%グレーと同じ明るさになるようにすればいい。これを一覧にしたのがガンマチャートである。

ビデオドライバや調整ツールによっては、たまに調整していないニュートラルな状態をガンマ1.0と表示しているものがある。混乱の元なのでやめて欲しいところだけど、普通のモニタでガンマ値が1.0ということはまずないなので、自分のモニタのガンマ値を確認したい時はガンマチャートでざっくり見当をつけよう。

ちなみにこの図、長時間見つめていると目がチカチカして疲れてしまう(笑)。全体的な明るさを測るものなので、少し距離をとって見るとか、焦点を外してぼんやり見た方がいいだろう。

また、ツールによってはガンマを赤・緑・青の色別に調整できるものもある。これは、ガンマ特性が色ごとに異なるためである。もし先ほどのグレーのグラデーションに一部だけ赤っぽいとか緑っぽいとか色が付いているように見える場合は、各色のガンマを調整しよう。

色の付いたグレースケール

最後に色温度を設定する。色温度はざっくり言うと「白の色合い」だ。何を言ってるんだ、白は白に決まってるじゃないか、と思った人は手元にある白い紙とモニタの白を見比べてみよう。シャツの白でもいい。同じ白でも色味にかなりの違いがあるはずだ。この白い(光の)色を、絶対的な尺度で表したのが色温度である。なんで温度なのかというと、私たちの世界には「光を完全吸収する物体は温度によって決まった波長の光を発する」という物理法則があるからだ。その波長の光を発する時の温度で色を表現しようというわけである。なので色温度の単位は絶対温度のケルビン。温度が高くなるほど黄色から白色を経て青っぽくなっていく。

色温度の模式図
(だいたいこんな感じ。正確なものではないので注意。)

室内の明かりはかなり黄色っぽいし、蛍光成分の含まれたシャツはかなり青っぽい。青みがかった方が清潔で白さが強く見えるので、Windowsのモニタはものによってはかなり高い色温度に設定されている。最近のトレンドはD65(6500K)なので、サックリ設定してしまおう。急にモニタが黄ばんでしまったと不安になるかもしれないが、大丈夫、問題ない。人間の目はかなりいい加減だ。すぐに慣れるはずである。

7. カラースペース

モニタをキチンと調整したら、まず明るさ1(白)と0(黒)が決まる。ガンマも設定したので灰色などの中間色も決まった。色温度を設定して、白色点(白の色味)も定まった。これで、モニタが表示する色はすべて設定できた。

……本当にそうだろうか?

あと一つ、忘れていることがある。それは赤・緑・青の各色が「どの赤」で「どの緑」で「どの青」かということだ。これを定義するものを、カラースペース(色空間)という。

色を正確に定義しようという試みは、ずっと昔から行われていた。「暗いくすんだ赤」とか「すっきりした水色がかった明るい黄色」とか主観の入った表現では、人によって意図する色が同じになるとは限らない。普遍的で、誰が扱っても同じになる色の表し方が必要だったのだ。

そこで考案された表色系には、美術の時間でお馴染みのマンセル色体系(色相・明度・彩度で色を表す)や、Photoshopで見たことがあるかもしれないL*a*b*表色系など、様々な方法がある。

xy図

これはそんな表色系の一つ、xyY表色系のxy成分を図にしたものだ。この傾いたお椀の中に人間の目に見える色(可視光線の波長)が全部含まれていて、これとY成分である明度で色を定義する。こうやって色の座標を定義しておけば、数値で色を指定することができるというわけだ。

ところで、モニタは人間の目に見える全ての色を表現できるわけではない。先ほどの図で表すと、一般的なモニタが表示できる色の範囲はこのようになる。

一般的なモニタの色空間

この三角形の範囲のことを「モニタが表現できる色空間」というように表現する。この三角の外の色はモニタで表示することはできない(今表示されているのは、この図が疑似的に表されたものだからである)。で、もともとはこの範囲も機器によってマチマチだったけど、あるときちゃんと規格化しようという話になった。数字でキッチリ決めておけば、デジカメでもプリンタでも同じ色を表現できるというわけだ。これがsRGBと呼ばれる色空間の規格である。

ところが、この範囲はけっこう狭い。印刷物なら表現できる色が、sRGBでは表示できなかったりする。これではDTPで厳密な色校正はできない。そこでAdobeは独自にAdobe RGBという別の空間を設定した。Adobe RGBは特に緑の領域がsRGBより広く、印刷物が表現できる色空間をだいたいカバーしている。そして高性能なモニタは、このより広いAdobe RGBの色空間を表示できるようになっている。デジカメの中にもsRGBだけでなくAdobe RGBをサポートしているものもある。

sRGBとAdobe RGB

表示できる色域が広いということは、それだけ沢山の色が表示できる……というのとは、ちょっと違う。なぜなら、通常パソコンで扱う色は基本的にRGB各色256階調・約1677万色の固定だからだ。するとどういうことが起こるだろうか。

先ほどモニタの調整で色温度(白色点)を設定した。この白色点もxy図で座標を表すことができる。この白色点を彩度0として、そのカラースペースで表示できる限界の色を彩度100%としよう。

各色空間での彩度

特に違いの大きい緑だけを取り出してみるとこんな風になる。

色空間による緑の違い

絶対的な色を扱うxyYなどの表色系に対して、パソコンのRGBで指定する色はあくまで相対的なものである。たとえばAdobe RGBのモニタで彩度100%の「すごい緑(データは0, 255, 0)」を選んだとする。そのデータをsRGBしか表示できないモニタで表示させると、表示されるのは「緑(データ上は同じ0, 255, 0)になってしまう。Adobe RGBで「緑」を選んだらなら、sRGBでは「まあまあ緑」に彩度が落ちてしまうのだ。

sRGBしか表示できないモニタでAdobe RGBで撮った写真をそのまま開くと、くすんだ色になってしまう。逆にsRGBで撮られた写真をそのままAdobe RGBのモニタで表示すると、本来の色より鮮やかすぎる色になってしまう。

また、Adobe RGBの方が色域が広いからといって、sRGBで作られた画像をAdobe RGBだと偽って開くと、元の色より彩度がきつくなるだけでなく、彩度の高い部分が正しく表示されなくなってしまう。どちらにしても、元の色とは違う色で表示されてしまうことになる。

sRGBの画像をAdobe RGBで開いた図

パソコンで色を正しく扱うためには、その色がどんな色空間で決定されたのかを把握する必要があるのだ。これを実現するのがカラープロファイル(ICCプロファイル)である。

(つづく)



Comments

大変だ~

モニターの調整と言うのは本格的にやろうと思うと大変なんですね、想像以上でした。
色温度の解説も、そうだったのか、と言う思いです。
印刷のプロの方など、こういう知識を駆使されているんでしょうな多分。

ギャラリーに行って本物の絵とポスターや招待状のハガキを見比べると、印刷された絵の方が色彩が綺麗に感じられてオヤと思うことが多いです。
いつも行く度、見比べてみてどのように変えられているのかじっくり観察するのが面白いです。
大概彩度がわずかに上げられているのかな・・・
(此処を読んだおかげで今度から見方も変わるかも)
こういう知識が有った上で高性能マックとしっかり調整されたモニターを使うから出来るんじゃないかと思う次第です。

Name
sannzi #u2lyCPR2
Site
URL
Post Date
2011-06-20
Post Hour
22:59:17

Edit

いよいよ

話が佳境に入ってまいりましたねぇ。
これから話がややこしくなってくると思いますが、頑張ってください。

最近ではAdobe RGBをほぼカバーしたモニターが10万円くらいで購入できる時代になったので、印刷業界ではカラースペースをAdobe RGBにしているのではないでしょうか?
以前はAdobe RGBにするかsRGBにするかと意見が分かれていました。

またモニターにはsRGBさえもカバーしていない物も多いですから、趣味であってもCGを主に制作する人は、価格が安いだけでモニターを選ぶことはしないほうが良いですよね。

Name
hisayan #vdXS97RM
Site
URL
Post Date
2011-06-21
Post Hour
22:08:08

Edit

だんだん複雑になって参りました(笑)

>sannziさん
ははは、でもプロ用の高い機械とソフトを使うとキッチリハッキリ設定してくれるので
手作業(っていうか目作業?)で調整することはないみたいです。ある意味楽かも(笑)
最近は印刷を生業にしていても、コンピュータのカラーマッチングの知識が不足している
業者もあるみたいですね。データ入稿が気軽にできるようになった弊害かもしれません。

確かに、チケットや絵葉書の絵って実物よりキレイに見えたりしますね~。
退色した部分を考慮して、見栄えよく補正しているのかもしれないですね。
あと人間の目の感じ方も、小さいものと大きいものとでは変わるみたいです。

>hisayanさん
はい、だんだんややこしくなってきて推敲が追いつくか心配です(笑)。
とりあえずあとはサックリとカラープロファイルをさらって、
早く本題のCGに戻りたいと思います。

モニターも安くなりましたねぇ。安くなってないのはメモリぐらいかなあ、という気がします。
今はAdobe RGBでマネージメントするのが主流なんでしょうかね。
とりあえず趣味で画像を扱う人は、調整のしやすさとかそのへんも考慮しながら
実物をて選ぶのが一番いいんじゃないかなーと思います。

Name
Kyotaro #NWbyPjWY
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Post Date
2011-06-22
Post Hour
03:27:28

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