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ガンマのはなし その1

2011年06月12日(Sun)

話をしよう。

と言っても、ゲームの話でもなければ神様の話でもない。以前から触れようか迷っていた、ガンマについての話である。あとついでに、リニアなんちゃらとかいうやつの話だ。「なんちゃら」という言い方をしたのは、所詮なんちゃら程度の話で充分だろう、と思われるからである。

今までガンマについて触れずにいたのは、自分自身がきっちり理解をしてなかったからだ。気になるたびに調べては似たような説明を読み、その時は納得するものの、しばらくするとまたあやふやになる。いい加減な事を書くのは個人の勝手だけど、鵜呑みにする人が現れたら困る。迂闊には触れられない。だけどようやくPoser 8のまともな使い方が分かってきて、さらにリニアなんちゃらを取り上げたサイトを見かけるようになって、さすがに「よくわからないから保留」のままではまずいと思うようになった。

このへんの話がいまいちピンと来ない人の中には、私と同じように「自分の持つ既存の知識と噛み合わないから」という人もいるんじゃないかと思う。逆に、ガンマ自体「なにそれ強いの?」と初耳な人もいるかもしれない。そこで、これから私が自分なりに確認したことを、数回に分けてまとめてみたいと思う。できるだけ正確に努めようと考えているけど、具体的な理屈よりは「ああ、こういうことなんだ」という納得感が伝わればいいかなと。

前置きが長くなったけど、本文はもっと長いので安心して欲しい(笑)。

1. ガンマとはなにか

ガンマの話のはじまりは、ブラウン管テレビが作られたころまで遡る。

ブラウン管というのはブラウンさんが作った真空管の一種である。陰極線管(英語でCathode Ray Tube: CRT)ともいう。原理は蛍光灯やネオンサインと同じだ。真空(に近い)状態のガラス管中の電極に電圧をかけて、放電で電子を飛ばすのである。高校の理科か物理の教科書で、細長いガラス管の中の電子ビームを磁石で曲げている写真を見た記憶がある人もいるだろう。アレである。

110612-1

ブラウン管では、陰極(マイナス極)から発射された電子の粒が、表示画面の裏側に塗布された蛍光物質に衝突することで画面を光らせる。この時、発せられる光の量は陰極にかかる電圧によって変化する。電圧が強ければ強く光り、弱ければ少ししか光らない。ところが、この関係は残念ながら正比例ではなかった。大雑把に表現すると、次のようになったのである。

光量=電圧γ

はいそこ、数式が出たからって逃げない(笑)。

この式をグラフで表すと下図のようになる。ガンマγの値によって曲線の形は変化する(実際にはガンマは1以下にはならない)。形がγの文字に似てるので、この曲線をガンマカーブと言うそうな。ホントかなー。

110612-2

でもって、製造されたブラウン管を色々調べてみると、このガンマ値はだいたい2.0~2.5ぐらいであることがわかった。ぐらい、というのはブラウン管ごとに個体差があったからで、一概にいくらとは言い切れなかったからである。この性質を「このブラウン管はガンマ2.0のガンマ特性を持つ」というような言い方をする。

さて、数式というものはただの記号の羅列ではない。意味を持つ言葉である。ではこの意味するところはなんだろうか。

まったく光が出ていない真っ暗な状態を入力・出力ともに0であるとする。そして画面がちゃんと白く見える状態を入力・出力ともに1であるとする。すると、入力が半分の0.5であるとき、出力すなわち明るさは0.5ではなく、ブラウン管が持つガンマ値によって増減することになる。ブラウン管のガンマ値は2.0~2.5。1より大きいので、明るさは0.5よりも小さくなる。つまり暗くなってしまうのだ。仮にガンマ値が2.0だとすると、光の量は0.5の2.0乗で0.25。黒と白の中間、50%の灰色を表示しようと考えたのに、得られたのは25%の明るさだったのである。

ところが、このガンマ特性はブラウン管にとってはあまり問題にはならなかった。なぜか。

なぜなら人間は、そもそも明るさを均等に知覚してはいなかったからである。

2. 知覚とガンマ

もともと人間の目(というか知覚)は、変化をおおむね倍々で捉えるという法則がある。つまり、10が20に変化したとき「明るくなった」と感じたなら、次は20が40になって初めて「同じくらい明るくなった」と感じるのだ。これは音についても同じで、音の強さを表すデシベルを0dBから10dB、20dBと変化させたとき、それにかかる電力が10倍、100倍と変化していることは、音響や電気に詳しい人ならよく知っているはずだ。

これは言い換えると「人間は暗い部分の変化には敏感で、明るい部分の変化には疎い」ということになる。これをグラフに表すとだいたいこんな感じになる。

110612-3

そう、人間の目は「γ=だいたい0.5ぐらい」のガンマ特性を持っているのだ。だから入力を半分にしたとき、ブラウン管から発せられる明るさはずっと暗いにも関わらず、人間にはちゃんと「白と黒の中間ぐらいの灰色」と感じられるのである。もっと言うと、私たちが普段「真ん中ぐらいの灰色」と感じている灰色は、物理的な光の量という意味では白の四分の1程度の明るさしか持っていないということになる。

3. テレビとガンマ

さて、これで困ったのはテレビではなくテレビ局だった。

これまでのことから、普通の灰色(50%グレー)を画面に映したいと考えたとき、送信する信号を白の半分にすればいいことは分かった。しかし、実際に私たちが50%と感じている灰色の被写体を撮影すると、得られる電気信号は半分よりずっと少なかったのである。見た目には50%の灰色でも、物理的な光の量は四分の1程度しかないのだから、これは当然のことだった。

110612-4

これをそのまま電波で送信すれば、ブラウン管のガンマ特性と合わさって、ガンマ値4ぐらいのものすごく暗い映像になってしまう。いくら人間の目が暗い部分に敏感だとしても、これでは暗すぎる。結局、ブラウン管のガンマ特性を打ち消す必要が出てきたのだ。

ガンマカーブを打ち消して直線にするためにはどうすればいいか。y=xγをy=xにするのだから、右辺がxとなるような別のx’を入力してやればいい。これを式にすると

x=x’γ

この式をx’について解くと

x’=x(1/γ)

となる。したがって、入力される信号にあらかじめブラウン管のガンマ値の逆数のガンマカーブを掛けておくといい、ということになるのだ。

そこで当時の人々は、「ブラウン管で暗くなる分、あらかじめ送信前の信号を明るく底上げしてしまおう」と考えた。これは道理である。各ご家庭お茶の間のテレビ一台一台にガンマ補正のための増幅装置を付けるより、電波で流す前の電気信号を増幅した方がずっと簡単で手間もコストもかからないからだ。

110612-5

暗くなる分だけ画像を底上げするにしても、ブラウン管には個体差があるので実際のガンマ値はわからない。そこでアメリカで策定されたNTSCというカラー放送の規格では、ブラウン管テレビのガンマ値を2.2(PALは2.8)と決め打ちした。あとの調整は各ご家庭で、というわけである。

かくして、ブラウン管(CRT)のガンマ値は2.2となった。

(つづく)



Comments

ああ、こういうことなんだ!

と言う納得感が得られまして快感でもありました。

ガンマ値は2.2の由来は分かりました、数式の部分はおいといて(^^;
もう之は論文と言っていいですね、
之だけ分かりよくまとめられるには何回も推敲された事と思います、読み良かったです。
これからどう論点が展開されていくのか楽しみです。

しかし、まさかブラウン管の解説から始まるとは、
以下駄文ですが思い出してしまったもので・・・

私はTV工場で簡単な組立て体験をした事がありまして、ぼんやりなものだからブラウン管の後ろの部品に触れまして、高電圧で指にスプーンですくったような穴が開いた事があります(^^;
アレが多分、この電子を飛ばす為のものだったのですね、
昨年液晶と取り替えるまで長年見てきましたがブラウン管の映る原理を始めて知りました。

Name
sannzi #u2lyCPR2
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URL
Post Date
2011-06-12
Post Hour
17:53:13

Edit

学べるPoserみたいな(笑)

>sannziさん
納得感って、だんだんやみつきになって来ますよね~(^^。
あ、数式の部分はさらっと流しておいてください(笑)。
おっしゃる通り推敲は重ねたので、読みやすいと言っていただけると嬉しいです。
後の回になるほど読み辛くなってしまうかもしれません、推敲が足りなくて(汗

>スプーンですくった
いやあああああ ><。そんなことになるのですか~…。
電子銃の部分は高電圧になりますし、電源を切っても自然放電するにはかなり時間がかかるので、
よく説明書とかに分解しないようにと警告が書いてありますね。
(鉛ガラスを使ってるというのもありますし)テレビって実は危険な家電だったんですね~。
そのうちブラウン管の仕組みも、真空管アンプのように骨董品の知識になるのかもしれません。

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Kyotaro #NWbyPjWY
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2011-06-13
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22:39:00

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2015-04-20
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