のっぺらレンダ。
2008年03月11日(Tue)
そんなわけで今回は和風展の絵について。前々回書いた通り、Triaxial Gateのバンパイア展の絵を仕上げたのが3日の直前。和風展にとりかかったのは本気でブログ記事をUPした後だった。一応イメージスケッチだけはバンパイア展にかかっている間にも簡単に描いてはいた(というか去年の第一回和風展の後から漠然とイメージは持っていた)のだが、一番のネックになる部分は、
「果たしてそれが自分にできるのか、どうやったら実現できるのかがわからない」
という、とんでもなく根本的なところにあったりしたのだった。
頭にあったのは自分なりの「和」のイメージで、平面的な要素が幾重にも重なって、眩暈がするほど絢爛な感じ。だもんで、とにかくレンダリングする要素からして未定の状態で、とるものもとりあえずAさん日本バージョンをロード。日本バージョンといいつつ、通常版との違いは特にない(爆)。

一応、肌の色とかが少し濃いめだったり黒髪が用意されてたり。
で、シミュレーション開始。最初からPhotoshop上でいろいろやるつもりだったので、着物の重なりは全くの無視。一着ずつシミュレーションする。

シミュレーションが終わったところでこんな感じ。
ライティングは今回100%の白色の拡散IBLを使用した。拙宅のライティングTipsでも説明している通り、拡散IBLライトは「ありとあらゆる方向から照らされるライト」である。その光の色を決定するのが使用する画像なわけだから、画像を使用しなければ全方向から同じ色で照射されることになる。つまり、まったく陰影のつかないライティングが実現できるわけだ。

同じことはテクスチャを環境色のみに接続することでも実現できるが、ノードの繋ぎ替えをシーン内の全マテリアルで行うのはかなりしんどい。シーン全体の明るさを調整する手間はあるが、こちらの方が手軽だろう。ちなみに全体が明るすぎると思う場合はライトの強度かIBLコントラストを調整しよう。

これだけではまったく前後関係がわからないので、部分的に影をつけることにする。Photoshopで手描きしてもそんなに手間はかからないだろうが、一応正確を期すために影をレンダリングしておく。
拡散IBLライトとは別のライトで影をレイトレースにし、出方を確認したらレンダリングオプションで「影のみ」にチェックを入れる。このチェックを入れれば、通常は乗算して出力される影の情報だけをレンダリングしてくれる。

もちろん、「影の投影」とレイトレースを使用しているので「レイトレーシング」のチェックは忘れずに。でないと何もレンダリングされずに真っ白な画面が出力されてしまう。
主線はPhotoshop上で付けることにした。Poserの輪郭線の描画は(少なくともペン画的な表現においては)とても鑑賞に堪えるものではないし、法線の傾きから輪郭を抽出するトゥーンシェーダ等では線に厚みが出てしまう。なので、前回紹介したライトを完全OFFにして当該マテリアルのみ環境色を白一色にする方法で、主立ったマテリアルのマスクを抽出する。

裏を抜く時はレンダリングオプションで「面反転ポリゴンを削除」にチェックを入れよう。自分の場合は面倒くさいので法線ノードを数値演算に繋いで計算したけど、そっちのが簡単なはずである。
あとはPhotoshopで抽出したマスクから体、着流し、帯、襦袢、襦袢の襟など必要となる選択範囲を作成していく。で、着物の柄などのレイヤーのマスクとしたり、裏面を表現するレイヤーを作ったり、「境界線を描く」で線を描いたり、その辺も全てPhotoshopでの作業になるので省略する。
人物が一通り完成したらレイヤーセットに放り込んで、背景を色々と重ねて行く。手持ちの素材集を重ねたり、プリセットブラシを散らしたりしてるうちになんとなく「音の波が重なって幻想が見える」というイメージに固まってきたので、パスで簡単に白い線を引いたり、弦をイメージした縦線を入れたりして全体的な帳尻を合わせる。
完成してみると、最初に思い描いた絢爛なイメージは概ね再現できたけど、落ち着きすぎて毒々しさが足りなかったような気もする。あと、選択範囲を作成する時に微妙なはみ出しや重なってしまった布の処理などは手で修正していったのだが、その時間が結構手間だったので、もう少し作業要領的に整理する必要があるかもしれない。
とりあえず、普通に撮ったら素でリアル寄りになってしまう自分としては、たまには絵画調やこの手ののっぺらレンダで変化を付けられたらなー、などと企んでいたり。