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モーフのミラーコピー

2017年02月28日(Tue)

Poser 11 Proはモーフパテツールでモーフターゲット(以下MT)の鏡面コピーを作成することができる。残念ながら並の方のPoser 11ではできないみたいだけど。この鏡面コピーはモーフブラシで新しく作成したMTに限らず、既存のモーフでもコピーできる。例えば、マグネットでこんな感じのMTを作ったとしよう。これを左右対称にしたい。

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まずは編集ツール(Editing Tools)パレットから、モーフパテ(Morphing Tool)ボタンをクリックする。パレットを片付けていたらウィンドウメニューで表示しよう。

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すると下図のような縦長なパレットが表示される。モーフパテツールはパーツ内の既存MTを組み合わせてぐりぐりする「統合(Combine)」タブと、ブラシでもりもりする「作成(Edit)」タブからできている。使いたいのはモーフブラシの機能なので、「作成(Edit)」タブを表示する。

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上部のSelect or Create Morph(日本語名未確認)で、編集するMTを新規作成したり選択することができる。今回はすでに作成済みのモーフを編集するので、リストから該当パートの該当グループの目的のMTを選択する。

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すると選択したMTが読み込まれ、ブラシで編集できる状態になる。値が1になってなかったらMT名の直下のダイヤルをひねっておこう。

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リストの下部のミラー(Mirror)ボタンをクリックして、コマンドを選択する。今回はHeadパート内で左半分にあるものを右半分にコピーしたいので、「(パート名): +x to -x」を選ぶ。

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例えば右腕のものを左腕に……なんて時は、「(フィギュア名): Right to Left」を選択してやればいい。選択したMTと同名のモーフが、右肩から左肩に、右腕から左腕にと丸ごとコピーされる。該当モーフがなければ新たに作成してくれる。

なお、どっちがプラスでマイナスだったっけ? と混乱する人のために。

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テキストプロップって初めて使った(笑)。

ちなみにリストで指定するXYZはワールド座標ではなく、個々のパートのローカル座標だ。パートが回転してたらややこしいので、ポーズや移動はまったくない状態で作業しよう。

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といういわけで無事にコピーできた。元々左右対象じゃない形状ではうまくいかないかもしれない。普通のフィギュアならたぶん問題ないと思う。

ちなみに既存のMTを組み合わせて好みの顔を作っていた場合、マグネットや外部MT読み込みで新しいモーフを作る時に既存MT分の変形を相殺するのを忘れないようにしよう。詳しくは過去ログ参照。

左右対称にしたら、今度は左右別々に動かしたいと考えるもの。そういう時はモーフダイヤルのオプションメニューで「モーフを分割(Split morph...)」を選ぶ。

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左右に分割された2つの新しいMTが作成される。元々のモーフはそのままだ。

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表示されるダイアログだと内部名を指定できるのかなと思ったんだけど、残念ながらそんなことはなかった。なんでだろ。

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とりあえず外部名はオプションメニューのパラメータ編集で変更できるからいいか。

モーフのコピーを使えば片側だけ編集しただけでキレイに反転できるので、マグネットをコピーする手間や、外部モデラで鏡面編集するの忘れてた、なんてミスが省ける。便利便利。

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細かすぎて伝わらないFix。

2017年02月26日(Sun)

義眼を新調したついでに、ちょっと気になってたところを修正してみた。

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こんなのわかるか! っていう(笑)。

レンダリングがリアルになると結構目立つ目頭部分の陰影。暗すぎるのは半分はテクスチャがイマイチなせいだけど、もう半分は肌と目玉の距離がちょっと離れすぎていたせい。若干ズレてたというか、元々無理に変形させたところもあって眼球と瞼がジャストフィットしてなかった、という部分を直してみた。

Shadeは頂点数が多いWavefront OBJ形式のファイルをインポートすると頂点番号をいじってしまうらしくて、フィギュアの(特に顔の)モーフ作成ツールとしてはちょっと使えない。HexagonはOSX El Capitanに未対応で、ウチの環境では画面が正常に描画されず、そもそもまともに使えない。というわけで新しいモデラを用意しないとな……と逡巡してたんだけど、結局お試し感覚でBlenderを入れてみた。とりあえず頂点ポチポチと動かすことはできたので良しとする。

もういっこ。こっちはわかりやすいかな。

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目の周辺をいじったせいで、まぶたを閉じると上睫毛が下瞼を貫通してしまっていた。というところをマグネットでざっくり修正。マグネットで細かいところを修正するときは、マグネットゾーンの拡大縮小や移動のパラメータの感度を小さくしてやると動かしやすくなると思う。最近はモーフの鏡面コピーができるから楽だよね。

あ、テクスチャも直さなきゃなー。



Poserで組み込むERC

2017年02月22日(Wed)

今回義眼を作り直したついでに、虹彩を凹ませたり、瞳孔の大きさを変えるモーフなどを仕込んだ。当然両目のパーツに別々にモーフダイヤルが存在するわけだけど、表情ならまだしもこのテのモーフは片側だけを操作することはまずない。両目とも一度に変更できた方が便利だ。でもって、ダイヤルがHeadパーツにあるとなお使い勝手がよろしい。となるとERCを仕込むことになる。

ERCは"Enhanced Remote Control"の略で、Poser 4の頃に確立したテクニックらしい。直訳すると拡張式遠隔操作、みたいな感じで「あるパラメータを別のパートのパラメータで制御する」という仕組みだ。公式にはBODY上で全身のモーフを操作するFBM (Full Body Morph) 以外は動作保証外だったけど、仕組み上はシーン内のすべてのチャンネルを操作することができる。というわけで、関節の補正や服の追従に当然のように使用されまくっていたし、黙認されてる状態だったわけだ。

ところが、いつかのバージョンからこのERCがPoser上で編集できるようになった。なったんだけど全然使ってなかった。テキストエディタでやった方が慣れてるし、間違いないし。とはいえ、ファイルを直接編集するのが怖いという人もいるだろうし、いい機会なのでやってみることにする。

ちゃんと調べたらPoser上でERCを組めるようになったのはPoser 8かららしい。ただ、パラメータにキーを打ってスプライン補完するという手法で、残念ながら後方互換がなかった。11のPro版では旧来のERCも組めるようになったということなので、両方試すことにする。

ちなみにERCは公式ではDependent Parameters、依存パラメータと呼ぶらしい。……あんまり言いたくないけど、こう「連動パラメータ」とか、せめて「追従型パラメータ」とか、意味で訳した方が直感的じゃないかなー。いや、いいんだけどさー。



あくちゅある。

2017年02月20日(Mon)

海外のアイテムの説明を読んでたりすると、たまにActualという表現を見かける。現実の、とか実際の、とかいう意味だ。日本語で言う「物理的に正しい」みたいな、ある種絶対的なニュアンスを含んでいる……ような気がする。とはいえ所詮はCG、何かしら誤魔化しはあるものだ。実際には現時点での、実用性と理想の妥協点、というような解釈をすることもできるだろう。

ものすごく以前、瞳の表現力を追求するために虹彩を凹ませるという手法があることを挙げた。斜め方向からの光を受けやすくなって、明るい部分が生まれるからだ。その時、「実際には人間の虹彩は凹んでいるわけじゃない」とも書いた。角膜を通過した時に光が屈折するから、そんな風に見えるのだと。

でもって、そろそろそういう「物理的に正しい」構造も、表現として使えるんじゃないかな~、と思ったわけだ。ついでに、濡れた表現のために眼球全体が透明な光沢の層との二重構造になっているのも、レイヤーで階層化できるようになった今では必要ないんじゃないか、むしろ計算負荷を増やしてるんじゃないか、とか。

そんなわけで、新しい義眼を作ってみた。

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構造を横から見るとこんな感じ。

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今回の目玉……というかポイントは光沢層の廃止と、瞳孔部分の形状。白目と瞳孔のパーツを繋げて白目が厚みを持っているような形状にしてみた。SSSを適用した時に、影響がより出やすくなるんじゃないかなあ、と。

人間の眼球は直径が24~5ミリ、黒目の直径が11~2ミリ。その比率で作ってからモデルに合わせて調整する。前回は3:1ぐらいの比率で作ったような気がするから、だいぶ黒目が大きくなる。

強膜いわゆる白目は厚さが最大1ミリ程度で、眼球の中は硝子体と呼ばれる液体(ほとんど水)で満たされている。で、強膜と硝子体の間は脈絡膜という黒く薄い膜に覆われていて、暗室のように余分な光を吸収するようになっている。赤ちゃんの白目が青っぽいのは、この脈絡膜が透けて見えるからなんだそうな。成長して白目の組織がしっかりするにつれて白が濃くなり、歳をとると脂肪がついて今度は黄色く濁っていく。この脈絡膜をpupilで表現することにする。半分の大きさしかないのは、なんとなくめんどくさかったから……(笑)。

強膜と角膜は連続していて、白いのと透明なのの違いはコラーゲン組織の大きさの違いらしい。白目の方が組織が大きくて、光が散乱するのだとか。つまり白目というのは半透明で、SSSを適用するべき材質だということだ。でもって、黒目との境界がなんとなく青黒っぽいのは、内側の脈絡膜の影響がほんのり現れているからだ。

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そんなことを考えつつ、まずはテクスチャを適用してレイヤーで光沢を追加する。今回UV自体が変わったので、テクスチャも若干改造している。

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で、白目にSSSを追加。フチの部分がより青黒くにゅるっとした感じに……なってるかな。光が透過したせいで、反対側の白目の断面が白く見えてしまっているけど、とりあえず無視。

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角膜に屈折を適用する。角膜の屈折率は1.337、水晶体と角膜の間の眼房という空間は眼房水で満たされていて、これの屈折率が1.336。水晶体自体の屈折率は1.43程度ということらしいので、とりあえず水っぽい屈折率を設定する。うーん、レンズっぽい感じになったかな。

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今までの義眼と比べてみる。大きさもテクスチャもいろいろ変わったからなんとも言えないけど、よりそれっぽく見えたらよしとしよう。

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テストレンダ。まあ、結局この大きさになっちゃうし、気休め的な。



屈折について

2017年02月18日(Sat)

今回はちょっと長めの記事。あ、いつもか。

1. 簡単なマテリアル

Superflyで屈折を持つマテリアルを実現するには、二通りの方法が考えられる。一つはFireflyと同様、Poserサーフェイスノードの屈折色にレイトレース>屈折のノードを追加すること。もう一つはCyclesサーフェイスノードのSurfaceにRefractionBsdfノードを追加することだ。

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大抵の透過体は表面がツルツルしているので、反射成分を追加することになる。CyclesカテゴリにあるGrassBsdfノードなら、屈折と反射を同時に描画してくれるのでお手軽だ。

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で、大体はこれで話が終わってしまうんだけど、もう少し複雑な構造やシチュエーションをレンダリングしたい場合には、知っておきたいことがある。

2. 屈折とは何か

そもそもなぜ、まっすぐに進むはずの光が曲がってしまうのだろう?

光はこの世で最も速く進む存在だ。その速度は3.0×108[m/秒]、一秒間に約30万キロも移動する。だけど実は、何かの物質の中を通り抜ける時には少しだけ遅くなる。真空を進むより空気中を進む方が、空気中を進むより水中を進む時の方が遅くなるのだ。

この速度の違いが、光の屈折という現象を引き起こす。斜めに当たった光が、そのわずかな到達時間のズレによって向きを変えてしまうのだ。これは、片側の前輪だけ先に砂利道に乗り上げた車によく似ている。反対側の前輪が砂利道に入った時、先に乗り上げた車輪は後から追いついた車輪ほど先に進んでいない。両輪の進む速度が違えば、車体は進みの遅い側へ曲がってしまう。しかし両方とも砂利道に入ってしまえば、車体は再びまっすぐに進む。

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実際には光は波の性質を持っているので、この現象はホイヘンス=フレネルの原理によって説明される。詳しく知りたい人は検索してみるといいだろう。

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ある物質に入る前の光を入射光、入らずに反射した光を反射光、中に入った光を屈折光、そして光が進む物質を媒質と呼ぶ。屈折率は真空中を進む光の速度を、媒質中を進む光の速度で割った数字だ。これを絶対屈折率と呼ぶ。どんな媒質の中でも光は真空中より速く進むことはできない。だから絶対屈折率は必ず1より大きい。

絶対屈折率 IOR = 真空中を進む光の速度 c ÷ 媒質の中を進む光の速度 v

波は、波長が短く振動数が高いほど媒質の影響を受ける。つまり波長の短い光ほど屈折率が高くなり、たくさん曲がることになる。この屈折率の違いがプリズム、分光という現象を起こす。よく水の屈折率は1.33であると言われるけれど、これは波長589.3ナノメートルの電磁波(黄色い光)を基準にした絶対屈折率だ。

さて、光はいつも真空から飛び込んでくるわけではない。空気から水の中へ、あるいは空気からガラスの中へ。ある媒質から別の媒質へ進む場合の屈折率は、どう求めればいいだろう。

媒質Aの物質から媒質Bの物質へ入射する時、その速度の変化の度合い、比を表す式はvb÷vaとなる。先ほどの式から、それぞれの速度vは光速cを絶対屈折率IORで割った値であるから、

vb ÷ va= ( c / IORa ) ÷ ( c / IORb ) = IORb ÷ IORa

つまり、新しい媒質Bの絶対屈折率IORbを元の媒質Aの絶対屈折率IORaで割ってやればいい。

相対屈折率IORA→B = 新しい媒質Bの屈折率IORb ÷ 元の媒質Aの屈折率IORa

またこのことから逆の場合、つまり新しい媒質から元の媒質へと出て行く時、光は相対屈折率の逆数の屈折率で屈折することがわかる。

3. Poserマテリアルへの反映

ではこのような屈折率を、どのようにPoserのマテリアルに反映するべきだろう。薄いガラスの板を通り抜けるシーンを考えてみよう。

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ガラスの絶対屈折率はだいたい1.45~である。大気の屈折率はほぼ1であるとしていいだろう。大気とガラスの境界面のマテリアルは、屈折率1.45を指定すればいい。じゃあガラスと大気の境界面のマテリアルは、その逆数の0.69を指定すればいいのだろうか。

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これはもちろん正しい。ただし、問題が一つある。光がいつも表から入ってくるとは限らないことだ。光源が反対側にある時、あるいはカメラがガラスの中にある時。どこから光が入ってくるかわからないのに、入る時と出る時で二種類のマテリアルを用意することはできない。じゃあどうしよう。

Poserはポリゴンの表と裏で、この二つを区別している。

つまり、媒質の境界をポリゴンで表現した時、面の表を元の媒質、面の裏側を新しい媒質として、その相対屈折率を適用するのだ。表から裏へ光が通り抜ける時は、適用された相対屈折率をそのまま使う。そして、裏から表へ通り抜ける時は、相対屈折率の逆数を適用する。ポリゴンで形成されたオブジェクトは、境界面に囲まれた任意の媒質で満たされた空間だと考えることができるわけだ。

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ためしにガラスの屈折率を設定した球体を二つ並べて、片方の面を反転させてみよう。ちょうど逆数の屈折率を適用した場合と同じ屈折像が得られる。

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というわけで長々と考えてきたけれど、結局冒頭に載せたように屈折ノードを接続すればいいことがわかる。

また、この媒質の厚さが十分に薄い場合、光は直進する時とほとんど変わらない軌跡を辿る。

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これは、形状が薄ければ屈折率が1に近づくということではない。厚さを無視しても良いような場合に限り、屈折のマテリアルは透明度で代用することができるということだ。また逆に、厚みを持たない形状の場合、屈折率は1でなければならない、ということでもある。表面しかないメガネのレンズに屈折を設定すると、光はいつまでもガラスの中を進んでいると考える。レンズから肌までの距離も全部ガラスだと判断してしまうのだ。

4. コップの屈折

さて、ややこしいのはここからである。

水晶球のようなアイテムを作りたいなら、球体に水晶の屈折率を適用すればいい。地面にできた水たまりを表現したいなら、平面に水の屈折を適用すればいいだろう。では、水を入れたガラスのコップを表現したい時、それはどんなジオメトリを持つべきだろうか。

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まず、こんなジオメトリに屈折率を持つマテリアルを適用してみよう。

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とても私たちの知るガラスのコップには見えなくなってしまった。コップが空の時、その中身は空気である。しかしこのようなジオメトリでは、光は中身を正しく判断することができない。

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だから屈折を使用するオブジェクトは、厚みを持つジオメトリでなければならないのだ。

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では次に、水を注いでみよう。それはどんなジオメトリを持っているべきだろうか。最初に思いつくのはこんな形だろう。

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しかし、これではやはり正しい屈折を計算することができない。なぜならガラスと空気、空気と水の境界は正しく設定できていても、ガラスと水の境界を設定できていないからだ。

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この状態では、コップの中身は空気なのか水なのかはっきりしない。ガラスと水の境界を設定しなければならないのだ。

丁寧に作られたコップのいくつかはこんな形状をしている。コップの形状の中に、液体の形状が入った形だ。

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しかし、これではどこか現実的でない結果になる。ガラスのコップと液体との間に隙間、つまり空気の層が存在してしまっている。屈折率が1だから影響はないだろうと思っても、光の進み方はそこで決定的に変わってしまうのだ。

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そんなわけで、最終的に屈折率を正しく表現するとこのような形になる。空気とガラスが接する面、空気と液体が接する面、そしてガラスと液体が接する面。この三つに別々のマテリアルを割り当て、それぞれに屈折率を設定してやれば、どの角度から見ても正しく計算される。

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また、間に空気の層を挟む先ほどの例より反射回数も少ない。ただし、このようにモデリングされているアイテムは、まだとても少ない。水量モーフを作るのもめんどくさいしね……。

5. 屈折と影

ところで。

先ほど「地面にできた水たまりを表現したいなら、平面に水の屈折を適用すればいい」と書いた。しかし実際にやってみると、なにやら変なことがわかる。

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マテリアルは正しく設定されているのに、水面が真っ黒になってしまう。どうしたことだろう。

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水面を動かしてみれば、真っ黒なのは影が落ちているせいだとわかる。屈折のマテリアルは適用された面を通り越してその向こうの様子を描画することができる。しかし、地面を描画するのは地面に当たったレイである。そして残念ながら、屈折の適用されたマテリアルは、他のオブジェクトから見たら不透明な材質として扱われてしまう。床や地面を計算する時、水面は光を通さない板として影を落としてしまうのだ。これはFireflyのころから変わらない。

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もちろん、だったら特性パレットで影を落とさないようにしてやればいい。しかし、他の影を落とすマテリアルと一体になっている場合には使えないし、一部のシェーダの描画で不都合が出たりする。なるべくなら使いたくない手段だ。

このような透過後の光を正しく描画するには、レンダリングオプションで屈折コースティクスを使用する。屈折コースティクスが有効な時、Superflyはライトトレースで光の経路を計算するので、地面は水面を通った光で照らされることになる。しかし、コースティクスの描画には膨大なレンダリングコストがかかる。計算結果がなかなか収束しないから、それなりの精度を得るにはもんのすごいサンプル数が必要になるのだ。

そこまで時間をかけたくない場合、また厳密な経路を計算しなくていい場合に有効な方法がある。LightPathノードを使用して、影の計算の時だけ別のシェーダを当てるように振り分けるのだ。

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LightPathノードのIs Shadow Rayは影の計算を行っている時だけ真(=1の値)を出力する。これで影の計算の時はただの透明シェーダ、それ以外の時は屈折シェーダで計算することができる。

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影を描画しない場合、Volumeノードの計算がうまく働かない。たぶん影を計算する時に同時に距離を算出しているからじゃないかと思う。だけどこの方法を使えばVolumeノードも正常に描画できる。なので、水深が深くなるほど色が濃くなるといった表現ができる。

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AbsorptionVolumeノードは距離に応じて色がつく(光が吸収される)シェーダだ。GlassBsdfの色はできるだけ薄くして、表面では吸収されないようにしておく。

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こんな感じ。屈折と反射と、あと中央付近の色が濃くなっているのがわかるかな。

6. まとめ

長々と書いたけど、屈折についての要点は以下の通りだ。

  • だいたいはCyclesサーフェイスノードにGlassBsdfノードを繋ぐだけでいい。
  • ポリゴンは媒質の境界面を表し、その表裏と屈折率には密接な関係がある。正しい屈折像を得るには屈折を考慮したモデリングとマテリアル設定が必要である。
  • 屈折のマテリアルは影を落とす。光を透過したい場合は時間をかけてコースティクスを使うか、より手軽にLightPathノードのIs Shadow Rayで透明設定と振り分けるのがいい。

そんなところかな。



そういえばいつの間にか、ポーズルームでもマテリアルファイルやマテリアルコレクションファイルを適用できるようになった。とはいえマテリアルルーム以外だと、マテリアルファイルを適用した時にはダイアログが表示される。マテリアルファイルは現在選択されているマテリアルグループに対して材質を適用するファイルだけど、マテリアルルーム以外ではどのグループに適用したらいいかわからないからだ。

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大半のジオメトリは通常マテリアルグループを持っている。このグループというのは、ポリゴン一枚一枚についてのグループ分けで、フィギュアのパーツを決定するために使用されるポリゴングループとはまた別のカテゴリとなる。マテリアルグループを一つも持っていないようなジオメトリでも、Poserで読み込んだ時に自動的にプレビューというマテリアルグループが作成され、すべてのポリゴンがプレビューのグループに割り当てられる。たとえば、基本小道具なんかはマテリアルグループを持たないジオメトリだ。

ジオメトリのマテリアルグループと、フィギュアファイルや小道具ファイルで定義されているマテリアルが一致するとき、そのグループに属するポリゴンは定義された設定で描画される。なぜこんな回りくどい言い方をするのかというと、ジオメトリが持たない=実際には存在しないマテリアルグループでも、フィギュアや小道具は保持することができるからだ。

よく遭遇するのがV4リリース初期に作られたMATポーズファイルを適用した時。ポーズファイルはほぼノーチェックでフィギュアの情報を書き換えてしまう。ジオメトリが持つマテリアルグループと微妙に異なる名前のMATがあったりなんかして、いろいろ適用しているといつの間にかリストにNostrilとNostrilsが並んでたり、EyeTearとTearが並んでたりする。

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マテリアルコレクションファイルを使用した場合、適用先のジオメトリを予めチェックしてくれる。適用先に存在しないマテリアルグループを定義していると、その存在しないグループを無視するか追加するか尋ねてくるのだ。

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追加した場合、マテリアルグループのリストに新しいグループが増える。もちろん、どのポリゴンも所属していない空のグループなので、レンダリングしても描画には影響がない。ただフィギュアや小道具の記述がちょっと増えて、テクスチャなんかが余分に読み込まれたりするかもしれない、というだけだ。

例えば、マテリアルグループAとBとCを持つ小道具をロードしてそれぞれのマテリアルを調整、A’とB’とC’になったとしよう。これをマテリアルコレクションファイルとしてすべて登録する。次に、マテリアルグループBとCとDを持つ小道具にこのファイルを適用すると、「はい」と選んだ場合はマテリアルグループが作成され、(A’)とB’とC’とDというマテリアルを持つ小道具になる。「いいえ」を選ぶとB’とC’とDを持つ小道具になる。

そんな感じで、例えば基本小道具に色々と調整したマテリアルコレクションファイルを次々に適用していくと、最終的に全部入りのマテリアルグループができる。

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これをマテリアルコレクションファイルとして登録すれば、マテリアルグループAからFまで様々なグループを持つ小道具に適用できる、全部入りのマテリアルコレクションファイルが出来上がるわけだ。適用する時には「いいえ」を選ぶ。リストが無駄に長くなっても構わないならどっちでもいいけど。

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もちろん、この手段が使えるのは「同名のマテリアルは同一のマテリアル設定である」という前提が成立する時だけだ。同じMetalという名前でAという小道具は鉄、Bという小道具は銅、Cはテクスチャが貼られている、なんて場合には使えない。けれど、最近の入り組んだアイテムを作成される手慣れたベンダーさんは、ある程度マテリアル名が共通化されてたりなんかする。そう、Stonemasonさんとか。

そんなわけで出来上がったロンドンの全部入りSuperfly用マテリアルがこちら。

KYO's Superfly materials for The Streets Of Old London

カメラに映る範囲の小道具に適用しては「いいえ」を選ぶと、該当するマテリアルだけ変更されるコレクションファイル。と、あとライトとかちょっと。Fireflyはぶっちゃけ繋いだだけでテストレンダもしてないので、適当に調整してください。というかSuperflyの方もかなり適当な設定なのでいい按配にしてください。

そんな適当な設定でも、キレイにレンダしてくれるSuperflyっていいよね、みたいな。

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だからつまるところテストレンダ。

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Cornucopia3DさんのMedieval Fantasy Village。すんごい素敵なんだけど、商品ページを見たらなんとなく予測できるように、Poserアイテムとしての出来はなんというか「他のソフト用に作ったものを持ってきました」的な感じで……丸ごと1個の小道具として出てくるあたりでお察し。まあこっちもエグい割引率の時に買ったから、文句があるわけじゃないんだけどね。

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でもやっぱりいいなー。こんなところ行きたいなー。日帰りだったらもっといいんだけどなー。少しだけ改造しちゃおうかなー。



いまさら始めるDSON Importer

2017年02月07日(Tue)

去年何年か振りにPoser界隈をチェックして驚いたのは、G2とかG3とかいう略語がDAZのGenesisの世代を表す言葉になっていたことだ。そりゃあ、イーフロフィギュアは流行ってなかったから仕方ないけど、寂しい話だなあぐらいには思った。さらに驚いたのは、そんなDAZからDAZ Studioでしか使えないはずの、GenesisフィギュアをPoserに読み込むツールが出ていたことだ。

だけどまあ、正直な感想としては「どうでもいいや」だった。

楽しみ方は人それぞれだ。自分なりの妄想世界を作り上げているユーザーにとって、大切なのは脳内にいるキャラであって使っているフィギュアそのものじゃない。イメージにより近くて、それなりに服があって、そこそこ使いやすければなんだっていい。そりゃ脳内で肌色が組んずほぐれずしてることが多いという人なら、関節の破綻の少なさも大事だろうけども。

だから新しい機能が使えますよ、とかツールを駆使すれば簡単にコンバートできますよ、とか言われてもイマイチ響かない。現状維持が一番楽なことに変わりはないからだ。響くとしたら使いたい服、もっと言うと「ウチの子にどうしても着せたい」とまで思わせる服が出た時だろう。しかしカタログを数年分遡って、出た結論は前述の通りだった。

だけど、そんなつむじ曲りのユーザーも振り向く一言がある。

「○○○○さんの新作背景、いいですよね」

ここにStonemasonさんやJack Tomalinさんの名前でも入れれば高確率で振り返る。ふぁんたじースキーならFaveralさんやMerlinさんも急所だ。Neftisさんの髪だって大好きだ。

フィギュアや服に興味がなくても、クオリティの高い小道具や髪はやっぱり魅力なんである。というわけで、今回は画像過多注意。





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確定名:Kyotaro
ネタを探しているらしい。

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