最適化オプション
2012年04月11日(Wed)
DAZの春のとんちき祭りで買ったものをちょろちょろインストールしたり、それまでに落としてたフリーものをぽちぽちインストールしたり、インストールが追いつかないってことはつまり買っても使ってないってことなんだから、溜息つくぐらいなら買わなきゃいいじゃんと思いつつ、イザ使いたいブツが定価売りしてたときの、底値を知ってるからこその葛藤なんてのを考えたら押さえられるモノは押さえておいた方がいいのかなあとか、要するにあんまり目新しいことはしてなくて。
建物アイテムのテストレンダ中に、レンダリングオプションの "HDRI optimized output" って何をしてるのかなあ、とか考えたりして。

そういやSponzaってレンダしたことなかったなあ、なんて思いついて、またまた寄り道。
Sponzaは海外のCGサイトの「みんなでGIレンダしようぜ」みたいな企画ページで使われている形状データだ。いろんな形式のファイルがフリー配布されている。よくレンダリング比較に使われていたりするので、目にした事がある人も結構いるんじゃないかな。
Radiosity competition - Sibenik Cathedral / Sponza Atrium
モデルはクロアチアにあるスポンザ宮殿で、現在は古文書館になっているらしい。いいなー。
企画ページには「条件揃えてレンダするときのルール」みたいなのがあって、建物のある緯度経度や年月日から太陽の位置を割り出して指定するようになってるんだけど、面倒臭いのでそういうのは他のソフトに任せることにする。実際、条件揃ってるレンダ画像ってあんまり見ないし。
Wavefront OBJ形式やLWO形式だとアーチ部分の多角ポリゴンがうまく読み込めなかったので、テクスチャ指定つきで読み込めた3DS形式で、41.0105%に縮小して旧Poser単位系からメートルへ換算。実際に寸法が合っているかは確認していない。

無限光と拡散IBLの2灯で、拡散IBLには付属のsky.JPGをベタ繋ぎ。IDL使用。レタッチあり。
ちなみにIDLを使わずにライティングしてみると、ざっくりこんな感じ。

拡散IBLのマップがベタ塗りなせいもあるけど、こういう大半直接光が当たらないシーンでは陰部分がのっぺりしてて、まともに使える絵にするには補助ライトを入れたり工夫する必要があるだろう。もうIDLのないPoserには戻れないカラダになってしまった、みたいな(笑)。
それはさておき、一枚目のライティングでトーンマッピングもガンマコレクションも使わずにレンダリングするとこんな感じになる。

無限光はほんのちょっとだけ黄みがかった白色で400%、拡散IBLは200%。天空光に比べて太陽光が少し弱い感じだけど、あんまり上げても階調が飛びすぎるのでこれぐらいで。
で、このシーンをトーンマッピングとガンマコレクションでそれぞれHDRI optimized outputありなしでレンダし、TIFF形式とHDR形式で保存する。
結果は以下のとおり(クリックででかサイズ)。

いっぱいあってわかりにくいかな。画像の並びはだいたいこんな感じになっている。

最適化がHDRI optimized outputで、CGはガンマコレクション(値は2.2)。それぞれの上段がトーンマッピングなし、下段がトーンマッピング2.2。左側がTIFFで保存したもの、右側がHDRで保存してPhotoshopで開いてそのまま8ビット変換したもの。トーンマッピングを使用しているときは、テクスチャノードに手製ガンマ補正を挟んでいる。
まずガンマコレクションを使用していない上半分。TIFFとHDRで明るさがだいぶ違っている。
Poserのレンダリングは、内部では通常のPCが表示可能な1677万色を越える広い範囲で計算されている。レンダリングウィンドウの表示は、その1677万色を越えた部分を切り落としているのだ。範囲外の情報はPNGやTIFFなど従来の形式では保存されないが、HDRやOpenEXRではちゃんと保存されている。で、以前のエントリでしつこく確認したように、3DCGソフトのレンダリング結果は人間の目が感じる世界ではなく、物理的な光の量を表している。なのでHDRで保存された画像をOSX上でプレビューすると、その内容をPCが表示できる1677万色の範囲内に収め、なおかつ人間の目の感覚に近くなるよう「明るい歪み」を掛けるのだ。
ちなみにHDRIに対応したCS2以降のPhotoshopでは、HDR画像の明るさや歪み具合を調整することができる。人間の目が可変なように、シーンに応じて露光量を変更することができるわけだ。
というわけでTIFFでは失われている階調が、HDRで保存して開くと明るく歪んで見える。ところがガンマコレクションを使用している左下の4枚は、TIFFとHDRでほぼ違いがない。というかTIFF=レンダリングウィンドウの表示で、十分明るくなっている。ガンマコレクション機能によって、レンダリング結果に明るい歪みを掛けられているからである。
逆に右下の4枚、ガンマコレクションを使用して最適化オプションを使用しない場合、HDRの方は明るくなりすぎてしまっている。開いたときにかかる歪みのせいで、二重に明るくなったからだ。
つまりHDRI optimized outputオプションは、ガンマコレクションを使用した時に「内容にどれだけの歪みが掛かっているか」という情報を埋め込んでいることになる。
じゃあガンマコレクションを使用しない場合、最適化オプションは使わなくていいのかというとそうでもない。上半分の8枚はこの状態だとほとんど分からないが、PhotoshopでHDRの露光量を調整すると、最適化の有無によって暗部の階調(情報量)がずいぶん異なることがわかる。

右部分の柱の暗いところ、最適化なしの方は階調がほとんどなくなっている。どうやら最適化オプションは暗部の情報量を多めに保存してくれているっぽい。つまり、ガンマコレクションの有無に関わらず、HDRで保存するときはHDRI optimized outputにチェックを入れてレンダするのがベターというわけだ。
果たして。
これだけ照度に差があるシーンだと、ガンマコレクションとトーンマッピングで歪み方にだいぶ差が出ている。明るさがレンダリングウィンドウで確認できるガンマコレクションの方が、使いやすいと言えば使いやすいかな。ちなみにガンマコレクションの方が色が強く出てるのは、自分のマテリアル組み替えミス。
まあどのみちマテリアルは画像のガンマ指定を総チェックしないといけないし、色味や彩度についてはPhotoshopでポストワークかけるわけで。そういう意味ではこういったいかにもIDLレンダって感じの画像は、HDR形式で保存するようにして調整はPhotoshopに丸投げしてもいいかもしれない。いくらでも色調補正できるし。
Poserのレンダリングウィンドウ上で、Photoshopの露光量みたいなリアルタイムな調整ができたら一番いいのになー。