Poser Pro 2012の被写界深度
2011年11月30日(Wed)
Poser Pro 2012のセールスポイントの一つに、レンダリング品質の向上というのがあった。具体的には透過や被写界深度あたりが改善されたらしい。というわけで、今まで実用性皆無だった被写界深度について、改善された効果を確認してみる。
被写界深度というのは、カメラ用語でピントが合っている範囲(奥行き)のこと。転じて、CGではピントが合ってない部分をボカす効果のことを指す。英語でDepth Of Field、DOFと略されることもある。というわけで以下DOFと呼ぶことにする。
使用したシーンはこんな感じ。

ライトは無限光3灯でシャドウマップのみ。レイトレースなし、トーンマッピング、ガンマコレクションもオフ。マテリアルの一部にディスプレイスメントが使用されていたので、「ディスプレイスメントマップを使用」にはチェックを入れている。
ちなみにPoser Pro 2010とPoser Pro 2012では基本的なレンダリングエンジンが大きく変わったということはないので、簡単なシーンでは設定が同じならレンダリング結果は同じになる。バージョンアップしてレンダリング結果が変わったと思い込んでいる人は、ちゃんと設定を確認しよう。

クリックで原寸画像。焦点距離は新Poser単位系で75mm、f値は1.4。車のドア部分(カメラからの距離はだいたい9mぐらい)にピントを合わせる。現実のカメラではf値はシャッターの絞りを表していて、f値を小さくする(=シャッターを絞って光の通る量を少なくする)とボケのサイズが大きくなるだけでなく、画像全体が暗くなる。が、3DGC、少なくともPoserではf値を変化させても画像の明るさが変わることはない。単純にボケのサイズだけが変化する。
レンダリング結果を確認すると、縮小表示の状態でもPro 2010のギザギザなボケがPro 2012では改善されているのがわかる。とはいえPro 2012でも、ザラザラしたノイズが乗っているように見える。これはボケを計算するためのサンプリング数が足りないためだ。そこで、レンダリングオプションでピクセルサンプルを上げていく。部分アップで比較してみよう。
Poser Pro 2010の場合。

Poser Pro 2012の場合。

ピクセルサンプルを上げていくと、Pro 2012では品質が改善されているのがはっきりとわかる。縮小前提ならサンプル7あたりで十分使いものになるんじゃないだろうか。まあ品質が上がったというよりは、どちらかというとPoser 6→Poser 7あたりで一旦劣化させたボカシのアルゴリズムを、ちゃんとしたものに戻したという感じだけど。もちろんP6当初とは比べ物にならないぐらいレンダリング時間は改善されているわけで、実際にかかった時間をストップウォッチで計測してみた。
ピクセルサンプル | Pro 2010 | Pro 2012 |
---|---|---|
3(DOF OFF) | 1:01 | 0:26 |
3 | 2:38 | 1:27 |
5 | 5:28 | 3:14 |
7 | 9:47 | 5:47 |
9 | 15:03 | 9:22 |
Pro 2012ではDOFを使わない普通のレンダでも2倍ぐらい早くなっている。体感的にはテクスチャのキャッシュとシャドウマップのレンダリングが特に早くなった感じ。で、ピクセルサンプルを上げれば当然レンダ時間は増えていくわけだけども、それでもPro 2012はPro 2010の1.6倍ぐらいの速度になっている。
ところでもう一つ、PoserのDOFではレンダリングのフチがボケ幅の分だけ抜けて、背景が見えてしまうという残念な問題があった。これを確認するために、PNG形式で保存した画像の背景に緑色のレイヤーを置いてみる。
Poser Pro 2010の場合。

Poser Pro 2012の場合。

残念ながら、Pro 2012でもフチが抜ける点は変わっていないようだ。
そんなわけでザックリと確認してみたけど、一応使えないこともないレベルになっているんじゃないかと思う。特にPhotoshopなどのレンズぼかしが苦手にしている、急激に距離が変化する入り組んだ部分など、どうしてもポストワークでは難しいボケなどには効果を発揮するんじゃないかなあ、と。
PhotoshopのフィルタにしろPoserのDOFにしろ、最初から光学的に正しいボケを再現しているわけではない。なので正確さには拘らず、使いやすい方を使えばいいんじゃないかなと思う。