皆さんそれぞれアイデアあり特色ありで、力作揃いの展覧会となってます。
参加せずに後悔するより、参加して後悔した方が(コラ)楽しいはず。
土日に余裕が有る人ならここからラストスパートでしょう。まだ間に合います♪
というわけで今回は翼展1枚目の反省。誰もツッコまないから先に自分でツッコんでおこう。
後ろで飛んでいる鳥、カラスに見えなくてごめんなさい(爆)
や、だって高かったんだものー(言訳)。セールも始まってなかったし~。
制作過程はいつも晒しているところなので、今回は絵が浮かばないorテーマが決まっている状態からの絵作りのことなんぞを。
プロの方なら日常茶飯事だろうが、趣味で絵を描いていると決められたテーマで絵作りする機会はなかなかない。テーマを与えられた時点でイメージが閃けば苦労はあまりないだろうが、そうでなければ「アイデアが浮かぶまで待つ」「なんとなく描く」のがほとんどではないだろうか。もちろん趣味なのだからそれで構わないのだが、その難点は容易にスランプに陥ってしまいがちなところだ。
表現というものは、どこかスポーツに似ている。繰り返し訓練しないと腕が鈍るし、漫然と反復したところでプラスにはならない。無理を通して多作が過ぎると枯渇してしまう(体を壊してしまう)し、トレーニングの方向性が偏っていれば歪なカタチになってしまう。そしてスランプになるとなかなか抜け出せない点も似ている。
だからこそ、イメージが閃かなかった時は敢えて「無理に」絵を作る方が良いと思う。それも、スポーツ選手がフォームを正すように、ひたすら理詰めで作るのがいい。作っている内に勘が戻ることもあるし、今までの自分に無かったものを出せるかも知れないからだ。そうして出来あがったものも人目に晒し、自分の作品として背負ってしまえば、それなりに愛着も責任感も湧く。より真面目に反省点を受け止めることができるのではないだろうか。
まあ偉そうに言ってるけど、要は今回スパっと絵が浮かびませんでした、と(笑)
幸い充分に時間があったので、じっくり展開することができたのが救いだったけど。
最初の段階では、自分は企画者でありプロデューサーであり、マネージャーだ。
企画者はまず簡単なアイデアを完成イメージなど考えずに無責任に紙に書いていく。「羽付き服を着て街を歩く女の子」「青っぽい妖精羽」「とにかく戦闘シーン」「○○(キャラ名)を使った絵」……そんな感じ。紙に書かれた言葉を改めて読むと、「こんな感じかな?」と落書き程度の絵が浮かぶ。企画者はそれをプロデューサーに提出する。
プロデューサーはまず予算や期間、技術力といった観点から到底実現不可能なものにダメ出しして、次に狙いを訊いてくる。企画に見どころはあるか、独自性があるか、テーマに沿っているか、見た人の歓心を買うことができるか。企画者が明確なビジョンを打ち出せなかったらその時点で没になる。そして企画者とプロデューサーの戦いが二週間ぐらい断続的に続く。
最後の頃になるとマネージャーも顔を出してきて、「その絵を作ることが自分自身の向上に繋がるか、逆にデメリットはないか」というあたりを検討する。ついでに「完成まで時間と気力に都合がつくか」あたりも計算する。
今回最終的に出された企画(アイデア)は4つあった。一つは非常にネガティブなアイデアの上に女の子の絵で、もしかしたらネタがかぶる可能性があったのでパス。Kyotaroの芸風(笑)に合わないというマネージャー視点でもアウト。もう一つはWIZ#3から、天使軍団vsザザぽんチームの戦闘シーンだったが、登場人物が10人近くになる上ザザぽん以外は新キャラ、さらに天使も悪魔も冒険者に敵対するモンスターという世界観がゲームを知らない人にはうまく伝わらないだろう、というプロデューサー視点でパス。
残ったものの一つが「烏男が片羽を出してるところ」。獣人というあまりないであろうネタと、本格ファンタジーなところ、絵的に見栄えする点が勝因だ。と言いつつ、この時点では絵は少しも浮かんでなかったけど。
だもんで次はテーマそのものの掘り下げになる。烏の生態やら獣人の語源やらを調べたり、連想ゲームでメモ用紙に単語を列挙したり。黒・孤独・孤高・不吉・不安・死体・狡猾・知的・胡散臭い・夕陽・高いところ……等々。ついでにキャラのデザインなんかも描いてみる。獣人は普段は全く普通の人間で、人間社会で生活している。烏っぽくちょっとした光モノなどを帯びた洒落者で、流れ者の風体をしているだろう。黒ずくめだと見る人にとってわかりやすいだろう。短いマントと境界のない翼・旅人風の軽装・斜めに佩いた細剣など、ある意味ベタな記号を揃えつつイメージを固定していく。
このあたりでさらに1週間。展覧会まで10日程。ようやく「ありえない高所に一人佇む姿」という基本コンセプトが決まる。あとは、連想ゲームから抜き出したアイデアを盛り込みつつ、どうすれば効果的かを考えながら絵を作っていく。
というわけでようやくPoser起動。
ロングショットになることが分かっていたのでキャラ作りは程々に、手持ちの中からイメージに合う服を着せる。で、片腕を非表示にして羽をペアレントし、適当にポーズを取らせる。
最初は立ちポーズだったのだが、しゃがんでいた方が飄々とした性格が強調されるように思えたのでそのように。高さを強調して背景に建物を入れようと考えていたが、俯瞰にすると町並みを全部描写しないといけないので(笑)水平に近い角度からのカメラアングルにする。
片翼というのは微妙に悩んだところだ。獣人が「化け切ったら完全にケモノ」なことを知らないと、片翼は別の方向でインパクトが強い。だが背中から生えているものではないし、両方翼だとなんかカッコ悪い。両方とも腕だったらそもそも翼絵にならない(笑)。だので、最初は遠くの建物に影が落ちて大烏の姿が移っている、という描写を考えていた。
この状態でテストレンダしたあと、Photoshopで落書きして最終的なイメージを決定。
それをPoserの背景ピクチャに読み込んで、細かいポーズやカメラ、ライティングなどを決定。でもって遠景の建物プロップを並べる。
ライティングを詰める内に、遠景に影を落とそうとすると構図的にかなり無理をしなければいけないことがわかってきた。仕方ないので一日ぐらい迷った末に、影で説明描写することを諦める。もう少し自分に技術があれば、破綻なく作り上げることができたかもしれない。だが迷いがとれたことで、ようやく絵が「自分のもの」になってくる。あとはもうひたすら作り上げていくだけである。
Shadeでシミュレーション用のクロスを作り、Poserでシミュレート後さらにShadeでフチや厚みをつける。ついでにほとんど写らない(笑)指輪、細剣用ベルト、袖口やブローチを作って、違和感がないようにマテリアルを揃える。
その後、後髪をマグネットで曲げたり服のはみ出しを修正したら、ようやく本番レンダ。
近景・遠景と別々に撮り、近景はさらにテクスチャフィルタリングONにして羽や髪を部分撮りして合成に使う。背景の雲は丁度良いものがなかったので(夕方の雲の写真って逆光のものがほとんどなんだなー)、色調補正したものを2枚重ねている。
さらに翼部分を拡大したsongbird(笑)を何パターンかレンダし、大きさを変えながら重ねて不穏な雰囲気を出す。
今回は翼の角度がイマイチ自分的に決まっていないこと、やっぱりカラスがカラスっぽくないこと、ちょっとすっきりしすぎて華が乏しいあたりが自分的反省点。
無理矢理絵を作ることの最大のポイントは、後戻りしないこと、絵作り前にしっかり方針を練っておいて、後の工程はそれに合致しているかどうかを判断基準にすることだと思う。そして何より、どの工程で不満が残っていようと、次の段階では全力を出し切ることが重要だ。それは他者と共同作業をしている感覚に近い。途中で煮詰まったとしても、「じゃあヤメ」で済まさない。なぜダメなのか冷静に話し合う。そうすれば少しは前に進むし、いつかは結果に辿り着く。
それは楽しい作業ではないし、むしろ苦痛かもしれない。でもその苦痛は、絵が作れないという慢性的な苦痛よりよっぽど清々しいのではないかと思う。
そして仕上がった絵を見れば、自分はやはり絵を作ることが好きなのだと実感してしまうのだ。