M3復興会議の雑誌風絵を作ってるとき、「これはブログに書いとかなきゃなあ」と考えていたことがあったんだけど、怒濤のような追い込み期間を経てすっかり忘れてしまっていた。
「DD Magazineの自分のページ、アイテムそのままレンダしてもあんな風にはなりません」
みたいな(笑)。まあ商品のプロモ画像とか見たら勘違いはしないと思うけど、自分の絵は明らかにレタッチ入ってるんで。てなわけで、どのへんにレタッチが入ってるのかというお話。取り上げるのは左ページのやつ。
まあ一目瞭然(笑)。シンプルな立ち絵で、目標はシャープでオサレな感じ。服はPOIのギャラリーで使用しているBeowulfのジャケットとカサブランカのシャツと60'sスーツのパンツの組み合わせ。自分の手持ちアイテムの中では一番スリムな線が出てるんじゃないかと思っている。ちなみにライトはレイトレ影の無限光1灯、拡散IBL1灯。あとIDLで面光源に平面1枚を使っている。
まずフィギュアをロードして、簡単にポーズを付ける。でもってセットを選ぶ。セットと言ってもシンプルなコンクリ壁だけが欲しかったので、いろいろロードしてみてテクスチャが一番いい感じだったThe Armoryを使用。テクスチャが少し大振りだったので、マテリアルルームでさっくり50%に縮小する。柱がちょっとヘンな感じかなー。
で、背景小道具は一旦非表示にして服をロードして着用したところ。
Beowulfも60'sスーツも「デフォ体型? 何ソレ」というスタンスの素敵服である(もちろん褒め言葉)。でもって、服を着せたらポーズの微調整。ジャケットの裾を持たせたり、あと、靴を履かせたら地面とちゃんと接地するように腰位置と足首の向きを調節する。
開き方が控えめなのは、カサブランカシャツが前部分しかなくてこれ以上開くとお腹が見えてしまうからである(笑)。60'sスーツのシャツを使わなかったのは、ネクタイの形が細すぎるから。
で、カサブランカのシャツの裾がベルト位置と合ってないのでマグネット。
カサブランカのネクタイが短すぎるのでマグネット。あと幅も調整。
Beowulfの裾が広がりすぎなのでマグネット。
で、はみ出す部分を非表示にしてこんな感じ。
癖のないシンプルな立ちポーズはいくらでも必要になるので、こまめにライブラリ保存しておくと便利。っていうか、市販のアイテム付属のポーズっていかにも「ポーズ取ってます」って感じで使い辛いんだよなー。
あとは別アイテムのパイプなどを並べる。コンクリ柱があんまりいい感じゃなかったので、その場で作って差し替え。テクスチャは元のやつを縮尺変更して流用する。
ここまで来てようやくマテリアル調整に行く。大きい背景小道具や複数フィギュアなど、シーンが重たくなりそうな場合は先に別ファイルで調整してから読み込んだりするけども、今回はアイテムも少ないシンプルなシーンなのでその場でやってしまう。
ありがたいことに60'sスーツのテクスチャが一枚ものなので、Beowulfのジャケットにそのまま貼ってレンダしながらだいたいのUVスケールを合わせる。良質なアイテムは大概UVの歪みもなくそのまま布テクスチャを貼り込める。袖とか横向きになってるやつは、イメージマップノードでマッピングをUVじゃなくVUに指定する。マテリアルグループが分かれてなかったら諦めてPhotoshopへ。
ネクタイはマグネットで無理矢理伸ばしているので、そのままテクスチャを貼ると伸びてしまう。なので柄はPhotoshopで合成することにして、ここでは拡散色を灰色にしておく。
で、さっくりライティングを決め、表情を微調整して本番レンダ。ざっと修正個所を確認する。

(クリックで原寸生レンダ)
はみ出しているところは中身を非表示にして部分レンダ。ポケットも縮尺を調整。髪は「レイトレースで表示」のチェックを外して再レンダ、2:8ぐらいの割合で合成する。バックルの映り込みは適当な写真をPhotoshopでオーバーレイ合成することにする。
それから、肩の修正用にジャケットの拡散色をグレーにしたものを同じ条件で撮っておく。あとレイトレも影もオフにして、マスク用の背景なしのアルファチャンネルもレンダ。
で、肩。こればっかりはPoserではどうしようもない。一番まともなラインのUziliteさんの服やカサブランカスーツでさえこの有様なんだから、他のアイテムの惨状は推して知るべし。ジオメトリを書き出してモデラで修正するという手もあるけど、正直UVの歪みを直すことまで考えたら圧倒的に時間がかかる。最終的な表示解像度を考えたら全然現実的じゃない。ということで肩のラインはPhotoshopでレタッチ。
はみ出し等の修正が済んだら、レイヤーを複製してゆがみフィルタをかける。イマドキの細くてカッチリした感じにしたかったので、思い切りよく修正。肩だけでなく脇のめり込んだ部分もなるべく直線になるように、ぐいぐいと引っ張る。やりすぎたあたりは再構築ブラシの「滑らかに」や「ゆるく」などを使う。確定する前にゆがみメッシュを保存しておくのを忘れずに。
フィルタをかけたら、背景のコンクリ壁が一緒に歪んでしまっているのがちょっと気になる。そこで残しておいた元レイヤーを手前に重ね、別撮りしたアルファチャンネルに同じゆがみフィルタをかける。
レイヤーサムネールをCommand+クリックして選択範囲を取得、元画像のレイヤーマスクにして肩の周辺だけ重ねる。
人物と背景を別レイヤーにコピーしとけばいいんじゃないかという話もあるけど、隙間の処理とかが面倒くさいので一枚のままでやる。これだけ壁と人物の距離が近いと、IDLの場合人物なしでレンダしたら壁の明るさが変わってしまうので別撮りは使えない。ちなみに右ページのアランの肩は背景別撮りで修正している。
で、今度は柄の修正。できるだけフラットな感じの部分をスタンプツールでコピーする。修正範囲が広いようならテクスチャファイルを探して貼り付けた方が早いと思う。
次に、灰色のジャケットに保存したメッシュでゆがみフィルタをかけ、その上にストライプ柄をオーバーレイで重ね、グループマスクで必要な部分だけ表示する。
いまいちキッチリとは合ってないけどその辺はふんいきで。
ネクタイも同じ要領で、まず新規レイヤーに適当な柄を直線ツールとコピーで描く。で、グループ化してネクタイ部分をペンツールで選択、グループにマスクを作る。
あとは色調とか明るさを好みに調整。ひとまず修正作業終わり。
だいたいいつも修正作業が終わった辺りで「お楽しみはこれから」みたいな気持ちになる(笑)。今回は誌面バランス的にリアル寄りにするつもりだったから、若干グラデーションをかけて、
彩度をちょっとだけ落としてレンズフィルタをかけて完成。
あとは誌面次第でトリミングしたり文字入れしたり。
肩のラインに限らず、最近の服は「難しいカタチは作らない」傾向になってるような気がする。V4服はそんな感じ、M4服はそれ以下、みたいな。たぶん、本当のスーツみたいな形状の服を作れるベンダーはいないんじゃないかなあ、なんて思ったりもして。単純に技術云々ならモーフや追加ボーンを注ぎ込めばなんとかなるかもしれないけど、売り物で大事なのは技術じゃなくて「わかりやすさ」や「安定性」だからなあ。
……なんて挑発的なことを書いたら、誰かが奮起して高品質な服を作ってくれないかなー(笑)。