15. Poser Pro 2010のガンマコレクション
Poser Pro 2010ではリニアなんちゃら周りの三つの新機能が追加されている。レンダリングオプションのガンマコレクション、テクスチャマネージャのガンマ指定、そしてガンマノードだ。
レンダリングオプションのガンマコレクション機能が有効なとき、Poserはすべての画像と色にガンマ補正をかける。それだけでなく、同時にレンダリング結果に対してガンマカーブをかけてしまう。
おかげでリニアワークフローが手軽に実現でき……などと言うわけがない。理屈から言えば画像にかけるガンマ値と色にかけるガンマ値とトーンマッピングに使用するガンマ値はそれぞれ別物である。ところがこのガンマコレクション機能では一律同じ値で効果がかかってしまう上、トーンマッピングを併用すると二重に歪みをかけてしまうことになる。
効果を計測すると、輝度1.0を最大値としたカーブをかけていることがわかる。他にゲインを調整するような機能はないので、ガンマコレクション機能を使うときは従来のLDRの範囲内でライティングを行うことになる。つまり白飛びに対してはライトを抑制するしかない。正直なんの意味があるのかと小一時間(ry
さらに、この機能はすべてのイメージマップノードに対して補正をかけるため、画像を使用しているその他のノード、拡散値や鏡面値、透明度やバンプに対しても影響を与えてしまうことになる。またもともとリニアデータであり、補正をかけるべきではないHDR画像にも補正がかかってしまう。
これを回避するには、テクスチャマネージャに追加されたガンマ指定の項目で「Use Gamma value from Render Settings(レンダリング設定のガンマ値を使う)」ではなく「Custom Gamma value(カスタムのガンマ値を使用する)」を選択しておく。
ガンマコレクション機能が有効なとき、カスタムが選択されている画像は個別のガンマ値で補正される。補正をかけたくない画像はここで1.0を指定すればいい。また、ガンマ補正とトーンカーブのガンマ値を別々に調整したい場合は、すべての画像のガンマ補正をカスタムで指定し、レンダリングオプションのガンマ値をトーンカーブの調整用に使えばいい。例えばトーンマッピングを併用するならレンダリングオプションのガンマ値は1.0にする。
ちなみにテクスチャマネージャはイメージマップノードごとに独立しているわけではなく、画像ごとに共通しているらしい。なので同じ画像をあるマテリアルでは2.2に、別のマテリアルでは1.8に補正する、といった使い方はできない。一つの画像を拡散色とバンプで使い回しているような画像は、ガンマ値の指定をどちらかに合わせて、片方は数値演算色ノードで補正する必要がある。正直なんの意味があるのかと(ry
三つ目の新機能、Mathカテゴリに追加されたGammaノードは、いわば累乗に特化した数値演算色ノードだ。指定した色にガンマ値を累乗した値を出力する。Inverseにチェックを入れると指定した値の逆数を累乗する……のだが、自分の環境下では動作がどうも不安定で、レンダリング途中で必ず止まってしまう。素直に数値演算色ノードを使った方が安全っぽい。正直なんの意(ry
ちなみに、ガンマコレクション機能は色と画像にしか働かない。なので、今までは拡散色に50%グレーを指定するのと拡散値に0.5を指定することは同じ意味だったが、ガンマコレクションを使用すると異なる結果になる。マテリアルを組むときは注意しよう。
16. Poserとリニアワークフロー
それでは、これまでのまとめとして実際にシーンを作ってみよう。Poser 8を使う場合は、イメージマップノードまたは色の手前に数値演算色ノードを挟み、トーンマッピングをかける。Poser Pro 2010を使う場合は、他にガンマコレクション機能を使う方法がある。
まずはPoser 8を使ってHDRIな拡散IBLライトを使う場合。
最初は普通にシーン作り。P8基本小道具のStudioBackdrop(日本語訳は不明)をロードし、フィギュアを配置してポーズを取らせる。
シーンが使い回しなのは省エネである。モデルが暑苦しい兄ちゃんなのは、きれいなおねいちゃんが見たかったら各自頑張るようにという心遣いである(嘘)。
次にマテリアルをリニア仕様に変更する。カメラに映る全マテリアルを見直して、拡散色や代替拡散に接続されている画像の手前に数値演算色ノードを挟み込む。
DAZフィギュアの細分化されたマテリアルグループを見ると発狂しそうになるけど、ここはぐっとこらえてやり遂げよう。自分はマテリアルグループを統合したフィギュアを使っている。
で、シーンができたら影なしテスト品質でとりあえずレンダしてみる。画像や色が補正されているので通常より暗くて濃い状態になっている。
続いてライトを設定する。ライティングについては何度も書いてるけど、基本はとにかく1灯ずつ設定していくこと。これを守っていればIDLだろうがIBLだろうがそんなに難しくない。出来合いのライトセットを利用する場合も、せめて1灯ずつレンダして効果を確認するぐらいの習慣は付けよう。まあ効率や上達を求めてないなら余計なお世話だけど。
というわけで0灯レンダ。
この時点で赤黒い人影が映ってる人は、マテリアルを見直そう。詳しくは過去記事参照のこと。
問題なければ1灯をオンにして拡散IBLに、色は白、強度を1に指定する。で、PoserランタイムのTexturesフォルダからHDRVFX>HDRVFX_pond_01_v_002a.hdrを指定しよう。HDR画像なので、マテリアルルームでライトノードのIBLコントラストを1に修正するのを忘れずに。
そのままレンダしたところ。
トーンマッピングにチェックを入れ(Exposureは初期値)、IDLをオンにしてレンダ。明るさが確認できればいいので、レンダサイズや品質はざっくり落としておくこと。ここでぐぐっとリアルっぽくなる。
これだけでは物足りないので、キーライトを追加しよう。拡散IBLライトをオフにして、代わりに白色の無限光を1灯オンにする。IDLは切って、影を確認しながらキーライトの角度を決める。
だいたいの位置が決まったら、拡散IBLライトとIDLを再度オンにしてテストしてみよう。
トーンマッピングを有効にしていれば大抵は色飛びしないものの、明るい階調が失われがちだ。バランスを見ながらキーライトとフィルライトである拡散IBLライトの強度を調整しよう。
だいたいこんな感じ。屋内スタジオのピンナップなら、無限光またはスポット1灯+拡散IBL1灯で、強度もほぼ決め打ちであっという間に完了する。
では、Pro 2010のガンマコレクションを使用する場合。
ここでは拡散IBLライトではなく、ライトドームのような全天を覆う小道具で環境光をライティングしてみよう。使用するのはStonemasonさんのVillage Courtyard。セットにスカイドームがついていて、テクスチャをそのまま天空光の成分に使用できる。
適当にカメラアングルを決めたら、影も形も映らないパーツはサックリ削除してしまう。で、まずはマテリアルの総点検だ。
前述のように、そのままガンマコレクション機能を使うとすべての画像が一律2.2で補正されてしまう。なのでまずはすべてのイメージマップノードについてテクスチャマネージャを表示し、色に使われる画像はカスタム指定の2.2、それ以外の画像はカスタム指定の1.0に変更する。面倒臭いが、これを怠ると色以外の値、バンプやディスプレイスメント、トランスマップなどの効果が変わってしまうのできちんと確認しよう。同じ画像は他のマテリアルでも修正されているのが唯一の救い。
そんなの適当でいいや、という人はそもそもリニアなんちゃらを取り入れる必要もないわけで。
マテリアルの総点検が済んだらシーンを保存して、ライトドームのマテリアルを変更。
ライトドームは空全体から降り注いでいる天空光を表現するものなので、まずテクスチャを環境色に接続。環境値はひとまず1にしておく。またライトドームは陰影付けされるものではないないので、拡散値は0となる。拡散色にノードをつないでいるのは、単にプレビューで見えるようにするためである。また、念のため特性パレットで影が落ちない設定になっているか確認しておこう。
まずは0灯レンダ。
次にガンマコレクションにチェックを入れ、IDLでレンダ。
ライトはすべてオフだが、ライトドームの影響で夜明け前のような薄暗い状態になっている。目標の日中にしては暗すぎるので、ライトドームの環境値を上げて明るさを調整。目安は日陰の明るさ、またはそこだけ太陽が雲に遮られたような明るさを目指す。とりあえず環境値を1.5にしたところ。
明るさを確認したいだけなので、時間のかかる植物などは非表示にしておこう。次に太陽光を設定する。白色またはやや黄味を帯びた無限光で、影はレイトレース。ライトドームを非表示にし、まずはIDLなしでレンダ、ライトカメラも活用しながら影の位置を確認しつつライトの向きを決定する。もちろんガンマコレクションはずっと有効にしておく。
だいたいの位置が決まったところで、IDLをオンにしてライトの強度を確認する。まずは1.0から。
これも日中の日差しにしては弱すぎるので、色飛びしないよう気をつけながら強度を上げていく。
強度を1.5にしたところ。天空光がないと、なんか宇宙空間みたいな感じ。
ライトドームを表示したところ。調整が済んだら、影に少しだけぼかしを入れて本番レンダする。

(クリックで生レンダサイズ)
もうちょっと明るくてもよかったかな。昼というより午前中な感じ。
IDLを使うメリットはとにかく「ライティングが楽!」ということだろうか。屋外・室内どちらにも応用が利くし、ちゃんと光が回り込んでくれるので、モデルさんにライトをほいほいと当てていく感覚でライティングできる。難点はとにかくレンダ時間がかかること。特にPoserは透明度のあるマテリアルの計算がネックなので、テストレンダでいかに負荷を省略するか、また本番レンダを繰り返さないよう念入りにテストできるかが勝負どころ。
リニアなんちゃらのメリットは、美しくない色飛びを抑えながら中間調を持ち上げることができること。今まで神経をすり減らしながらライト強度を上げていたのが、すんなりと調整できるようになる。デメリットはなんといってもマテリアルを見直さなければならないこと。単純に2.2をかければいいという代物でないことは、もう十分わかってもらえたと思う。
さて、長かったガンマの話もこれでようやく終了である。ブラウン管テレビから始まって、カラープロファイルやらランバートシェーディングやら色々寄り道しつつ、なんとかリニアなんちゃらまでたどり着くことができた。自分の書いてきたことが、すべての人にすぐに役立つとは思ってないし、誤りがないとももちろん思わない。けど、これから先調べものをする人の、判断材料の一つなれたらいいなとは考えている。なので、そういやこのへんにまとまった記事があったなあ、ぐらいに心に留めておいてもらえれば嬉しい。
なんか今年一年分のTips記事を書ききった気分なんだけど、たぶん錯覚なんだろうなー。