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0灯パノラマ球ライティング。

2016年11月08日(Tue)

0灯ライティングということは、つまりライトでないものを光源にしているわけで、要するにパノラマのHDR画像を貼り付けた球体を光源としているわけである。

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具体的な手順は以前ランタイム探索の回で説明した通り。ライトがないとシーンが真っ暗になるので陰面消去のワイヤーフレーム表示なんか使うと楽かもしれない。

使用する画像は360度展開のパノラマならまあ大体なんでもいいっちゃいいんだけど、できればHDR画像がいい。一見同じように見えても、保存されている情報量が違うからだ。光源としては、ただの白よりも強い明るさを保存しているHDR画像の方が、より明るくなるしハイライトも鋭くなるわけで。

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それにレンダリング結果をHDRで保存したときも、パノラマ画像がJpegだと露出調整で潰れた階調が目立ってしまう。もともと1,677万色しかないから、HDRで保存しても階調が増えるわけではないのだ。

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パノラマ球を光源にするぐらいなら拡散IBLライトでいいじゃないか、というツッコミもありそうだけど、拡散IBLは結構厳密でない照らし方をするし、鏡面反射も表現できない。高解像度なHDRの階調を活かすなら、パノラマ球の方が表現力は圧倒的に高いと思う。

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ちなみに使用しているのはデフォルトランタイム下のTexture>HDRVFXフォルダに格納されているやつ。そのまま背景に使用すると暗すぎてイマイチ使えなかったものも、HDRで保存すればPhotoshopで露出調整できるので、可能性がずっと広がる。

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まあ、もとのファイルが暗いと明るくしたときにノイズが目立つので、よりピクセルサンプルを上げるか環境値を上げた状態でレンダする必要があるかも知れない。自分的にはバランスのとれたPondや、ちょっと歪んでるけどそのままで十分な明るさが得られるOffice foyerなんかが使い勝手がいいと思う。というわけで前々回のAさんはOffice foyerを逆光方向で使っている。実は背景とパースが合ってないんだけど、まあそこはそれ。

ネット上で配布されているHDRIの中には、単体で光源として完結できるものと、メイン光源(主に太陽光)の明るさを抑えてあるもの、両方がある。そのへんはメインライトを追加するなり臨機応変に対応すればいいんじゃないかな。

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HDR保存のススメ

2016年11月04日(Fri)

なんというか、一つのことを説明しようとすると、その手前のこともちゃんと書いておかないといけないような気がして。書いてたら長くなっちゃうから少しずつ区切ろうとしたら、いつの間にか書くのを忘れてたりして。

そんな感じの小ネタ。

Fireflyのレンダリング設定にあったトーンマッピングやガンマコレクションは、Supeflyのレンダリング設定には存在しない。Superflyは物理ベースのレンダラだから、ガンマ補正しないという選択肢自体が存在しない、という解釈でもいいんじゃないかなと思う。

とはいえ、その機能を多用していた人にとっては、無くなってしまうと困惑してしまうものだ。トーンマッピングなんかはその一つだろう。通常のモニタが表示できる赤緑青各色256階調16,777,216色の範囲を超える、明るすぎる部分をほどよく表示可能な範囲内におさめてくれる機能である。

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じゃあSuperflyは256階調を超える明るさを表現できないのか、すべてのピクセルが黒から白の範囲内に収まるようにライティングしなければならないのか、というと、そんなことはない。

画像を保存するときにHDRI、すなわちRadiance形式(.hdr)またはOpenEXR形式(.exr)を選択すればいいんである。

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FireflyでもSuperflyでも、内部の計算自体はリニアなデータで行なわれている。というかレンダラは本来リニアな光のエネルギーを計算するものである。レンダリングウィンドウに表示されたレンダリング結果は、そのリニアな計算結果に(必要ならガンマ補正をかけて)モニタが表示できる各色256階調だけを表示しているにすぎない。当然JpegやPNGなど従来の画像形式で保存できるのも、切り取られた256階調だけだ。

HDR(High Dynamic Range)は、従来の各色256階調、8bitに収まらない広範囲のデータを扱う形式だ。HDR形式で保存された画像をHDRI(High Dynamic Range Image)と呼んだりする。Radiance形式は一番広く普及している形式、OpenEXR形式はさらに高精度かつ多くのデータを保存できる形式だ。どちらもPoserから出力する分にはそんなに違いはないので、自分の使っている画像処理ソフトが対応している形式を選べばいい。

PhotoshopでRadianceまたはOpenEXRファイルを開くと、自動的に32bitモードになる。

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で、イメージメニューの色調補正>HDRトーン...やフィルタメニューのCamera RAWフィルター...を使って、「RAWデータを現像するように」思い通りの露出に変換する。

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要するに、Superflyでは「トーンマッピングは画像処理ソフトでやってね」ということだ。

たとえば、こんな感じのレンダリング結果があったとしよう。

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窓から光が入り込んで、室内を照らしているようなシーンだ。正直パストレーシングがものすごく苦手とするシーンである。なにせ開口部が狭いから、レイがなかなか光源にたどり着かない。途中で死ぬから値が収束しない。収束しないということはノイズが減らないということである。なので開き直ってピクセルサンプルを上げ、さらに拡散反射の反射回数を増やし、光源の強度をがっつり上げる。ある程度光が回らないといくら計算回数を増やしてもなかなか収束しないので、まずは室内に光が回るようにする。

すると当然、明るい部分は思いっきり色飛びしてしまう……という感じのレンダリング結果。

しかし色飛びしているように見えても、HDRIならちゃんと中身は保存されている。Photoshopで開いて、32bitモードを16bit(または8bit)モードに変えてみよう。

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HDRトーン機能が起動して、HDRIをいかに256階調の範囲内に収めるか(=トーンマッピング)、その方法を尋ねてくる。

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HDRトーンはもともと、画像をゴテゴテといわゆる「HDR風」に補正する機能ではなくて、HDRIをトーンマッピングする(ついでにノイズ軽減や強調なんかもできる)機能だったわけだ。

デフォルトだと「方法」がローカル割り付けになってて、階調をそれなりに収めてくれている。窓の外に実はスカイドームが配置されてたり、鎧戸が水色だったり、レンダリングウィンドウで表示されなかった情報がキチンと保存されているのがわかる。

あとは、自分の好みになるよう露出調整すればいい。ちなみに「方法」を露光量とガンマにして値をいじらなければ、元の色飛び状態で変換できる。

いったん16bitや8bitモードに変換してしまうと、当然ながらHDRで保存されていた細かなデータは失われてしまう。この変換は不可逆なので、モードを変換するときは後悔しないよう慎重に行おう。変換後のデータはpsd形式で保存し直して、元ファイルは残しておいた方がいいかもしれない。変換せず32bitモードのままでも構わないんだけど、使える機能が限定されるので本格的に加工するなら最初に露出調整して現像してしまうのがいいと思う。

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HDRトーンではなく、Camera RAWフィルタを使うこともできる。やることはHDRトーンとほとんど同じだけど、こちらは部分的にマスクをかけたり、より細かい調整が可能だ。自分が操作しやすい方を使えばいいんじゃないかな。あんまりゴテゴテと補正をかけるとリアルさは失われてしまうので注意。

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もともと階調飛びしないようなライティングやシーンなら、もちろんどの画像形式で保存しても中身は変わらない。けど、現実世界のカメラで撮影するにも苦労するような、明暗差が激しいシーンを作る時にはHDRは特に有効だ。階調飛びを気にせず「現実的な数値」でライティングし、HDRIでリニアなデータのまま保存し、画像処理ソフトで「現像」する、というような流れになるのだと思う。

じゃあ「現実的な数値」とは何かというと、それはまた別の話になるので、またいずれ。



ミルワの到達距離は3ブロック。

2016年08月22日(Mon)

ところでライトというものは、二次減衰するものである。

いきなりなんだと思われたかもしれないが、日頃ウダウダと考えていることの取りかかりとして、少し確認しておきたいことができたので。

光というものは電磁波であり、揺らぐ場そのものであり、その伝播そのものが時空……すなわち距離と時間を定義する。

確かそんなだったと思う(逃)。

この電磁波というやつは、別のものにエネルギーを持っていかれない限り、どこまでも進む。いつまでも進む。なにせ宇宙の始まりからいまだに進んでいる。

いやでも、実際離れたら弱くなるよね? と思ってしまうのが、いわゆる逆二乗の法則というやつである。だいぶにも書いたかもしれないけども、図にするとこんな感じ。

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光源から離れると、離れたぶんだけ光は広がっていく。同じ光の量が、より広い面積に照射されるから、一区画だけを見れば光の当たる量は少なくなるのだ。

距離が倍になれば面積は4倍になる。一区画あたりの光の量は1/4。距離が3倍になれば面積は9倍。最初の地点での明るさの1/9になってしまう。だけど、いつまで経っても0になることはない。

だから本来、Poserのポイントライトやスポットライトに終点距離が存在するのは、物理的におかしいんである。旧来のPoserのライトは減衰の始まる地点と完全に0になる地点を設定し、中間の明るさを均等割りしていく。それは直感的にはわかりやすいかもしれないが、物理的に素直な計算をしようと思うと、どうしても障害になる。

そういうわけで、PoserではIDLが実装されたバージョン8で、ようやく二次減衰を扱うことができるようになった。

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距離が倍になれば明るさが1/4になるライトである。しかしこれは実際に使ってみるとなかなか調整が難しく、妥協の産物のように明るさが距離の反比例になる反比例ライトというのも同時に追加されている。

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さて、それでは「距離が倍」というのはどういう意味だろう。もちろん基準というのはなんでもよくて、例えば1メートルの距離で明るさが1なら、2メートルの距離では0.25になる。それはわかっている。知りたいのは、Poserのライトは強度が100%のとき、いったい「どの基準で100%になるのか」という点だ。

じゃあ測ってみよう。

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シーンの中央にポイントライトを一つだけ設置する。色は白、強度は100%。で、それに照らされる真っ白な板を用意する。鏡面反射その他のパラメータはちゃんと0にしておく。この板をライトから離していけば、どんどん暗くなっていく。その色つまり輝度で、何パーセントの光が板に当たっているのかを測定する。

簡単のために、背後に別の板を配置する。こちらは拡散反射も鏡面反射も0、環境色と環境値だけが設定された「発光する板」だ。この板はライトの影響を受けず、どの距離どの向きにあっても同じ明るさに見える。環境色を白にして、環境値を0.25にする。この発光する板と照らされる板の明るさが同じになったとき、照らされる板はちょうど「基準の倍の距離」に位置することになる。

なんで100%の明るさでやらないのかというと、白飛びしてしまってわかりにくいからである。あと、ガンマコレクション機能を使うとレンダ結果に「人間の目の明るい歪み」をかけてしまうので、FireflyのガンマコレクションOFFの状態で確認する。

表1: 表面輝度とスポットライトの照射距離の変化
表面輝度 [%]66.750.025.020.011.1
ライトからの距離[PU]1.231.422.002.253.00

結論から言うと、「たぶんそうだろう」と思ってPoser単位で測ったら、そのまんまだった。

つまりポイントライトやスポットライトは、1Poser単位の距離にあるとき設定された強度そのままの明るさで対象を照らすライトである、ということだ。

ところで1Poser単位は8.6フィートである(ちっ)。8.6フィートは2.62メートル。つまり二次減衰する100%のライトは、2.62メートルより近い距離にあると、とんでもなく色飛びする強烈なライトということになる。近いと目茶苦茶明るいくせに、離れると一転、急激に暗くなる。

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最近はガンマコレクションを使う人が多いだろうし、Superflyではオフにするという選択肢がないので、この曲線にガンマ補正をかけてだいたいこんな感じ。

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暗い部分が持ち上がるから、減衰がゆるやかになっている。

で、明るすぎる部分を調整するには、もちろんライトの強度を落とすわけだけども。具体的にどれぐらい変化するのか、ガンマ補正2.2、距離をメートルに直してプロットしてみた。

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明るさが10%でも、1メートルの距離ではまだまだ明るいようだ。逆に、5メートルを超えるあたりからは変化がなだらかになる。つまり補助ライトを当てるときは、対象から5メートルぐらいは離してやらないと、ちょっとの変化で明るさがやたらと変わってしまうというわけだ。逆に十分に距離をとってやれば、その値はだいたい見当がつく、ということになる。

はたして。

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理論に裏打ちされた妄想癖、っていう。



最適化オプション

2012年04月11日(Wed)

DAZの春のとんちき祭りで買ったものをちょろちょろインストールしたり、それまでに落としてたフリーものをぽちぽちインストールしたり、インストールが追いつかないってことはつまり買っても使ってないってことなんだから、溜息つくぐらいなら買わなきゃいいじゃんと思いつつ、イザ使いたいブツが定価売りしてたときの、底値を知ってるからこその葛藤なんてのを考えたら押さえられるモノは押さえておいた方がいいのかなあとか、要するにあんまり目新しいことはしてなくて。

建物アイテムのテストレンダ中に、レンダリングオプションの "HDRI optimized output" って何をしてるのかなあ、とか考えたりして。

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そういやSponzaってレンダしたことなかったなあ、なんて思いついて、またまた寄り道。

Sponzaは海外のCGサイトの「みんなでGIレンダしようぜ」みたいな企画ページで使われている形状データだ。いろんな形式のファイルがフリー配布されている。よくレンダリング比較に使われていたりするので、目にした事がある人も結構いるんじゃないかな。
Radiosity competition - Sibenik Cathedral / Sponza Atrium

モデルはクロアチアにあるスポンザ宮殿で、現在は古文書館になっているらしい。いいなー。

企画ページには「条件揃えてレンダするときのルール」みたいなのがあって、建物のある緯度経度や年月日から太陽の位置を割り出して指定するようになってるんだけど、面倒臭いのでそういうのは他のソフトに任せることにする。実際、条件揃ってるレンダ画像ってあんまり見ないし。

Wavefront OBJ形式やLWO形式だとアーチ部分の多角ポリゴンがうまく読み込めなかったので、テクスチャ指定つきで読み込めた3DS形式で、41.0105%に縮小して旧Poser単位系からメートルへ換算。実際に寸法が合っているかは確認していない。

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無限光と拡散IBLの2灯で、拡散IBLには付属のsky.JPGをベタ繋ぎ。IDL使用。レタッチあり。

ちなみにIDLを使わずにライティングしてみると、ざっくりこんな感じ。

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拡散IBLのマップがベタ塗りなせいもあるけど、こういう大半直接光が当たらないシーンでは陰部分がのっぺりしてて、まともに使える絵にするには補助ライトを入れたり工夫する必要があるだろう。もうIDLのないPoserには戻れないカラダになってしまった、みたいな(笑)。

それはさておき、一枚目のライティングでトーンマッピングもガンマコレクションも使わずにレンダリングするとこんな感じになる。

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無限光はほんのちょっとだけ黄みがかった白色で400%、拡散IBLは200%。天空光に比べて太陽光が少し弱い感じだけど、あんまり上げても階調が飛びすぎるのでこれぐらいで。

で、このシーンをトーンマッピングとガンマコレクションでそれぞれHDRI optimized outputありなしでレンダし、TIFF形式とHDR形式で保存する。

結果は以下のとおり(クリックででかサイズ)。

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いっぱいあってわかりにくいかな。画像の並びはだいたいこんな感じになっている。

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最適化がHDRI optimized outputで、CGはガンマコレクション(値は2.2)。それぞれの上段がトーンマッピングなし、下段がトーンマッピング2.2。左側がTIFFで保存したもの、右側がHDRで保存してPhotoshopで開いてそのまま8ビット変換したもの。トーンマッピングを使用しているときは、テクスチャノードに手製ガンマ補正を挟んでいる。

まずガンマコレクションを使用していない上半分。TIFFとHDRで明るさがだいぶ違っている。

Poserのレンダリングは、内部では通常のPCが表示可能な1677万色を越える広い範囲で計算されている。レンダリングウィンドウの表示は、その1677万色を越えた部分を切り落としているのだ。範囲外の情報はPNGやTIFFなど従来の形式では保存されないが、HDRやOpenEXRではちゃんと保存されている。で、以前のエントリでしつこく確認したように、3DCGソフトのレンダリング結果は人間の目が感じる世界ではなく、物理的な光の量を表している。なのでHDRで保存された画像をOSX上でプレビューすると、その内容をPCが表示できる1677万色の範囲内に収め、なおかつ人間の目の感覚に近くなるよう「明るい歪み」を掛けるのだ。

ちなみにHDRIに対応したCS2以降のPhotoshopでは、HDR画像の明るさや歪み具合を調整することができる。人間の目が可変なように、シーンに応じて露光量を変更することができるわけだ。

というわけでTIFFでは失われている階調が、HDRで保存して開くと明るく歪んで見える。ところがガンマコレクションを使用している左下の4枚は、TIFFとHDRでほぼ違いがない。というかTIFF=レンダリングウィンドウの表示で、十分明るくなっている。ガンマコレクション機能によって、レンダリング結果に明るい歪みを掛けられているからである。

逆に右下の4枚、ガンマコレクションを使用して最適化オプションを使用しない場合、HDRの方は明るくなりすぎてしまっている。開いたときにかかる歪みのせいで、二重に明るくなったからだ。

つまりHDRI optimized outputオプションは、ガンマコレクションを使用した時に「内容にどれだけの歪みが掛かっているか」という情報を埋め込んでいることになる。

じゃあガンマコレクションを使用しない場合、最適化オプションは使わなくていいのかというとそうでもない。上半分の8枚はこの状態だとほとんど分からないが、PhotoshopでHDRの露光量を調整すると、最適化の有無によって暗部の階調(情報量)がずいぶん異なることがわかる。

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右部分の柱の暗いところ、最適化なしの方は階調がほとんどなくなっている。どうやら最適化オプションは暗部の情報量を多めに保存してくれているっぽい。つまり、ガンマコレクションの有無に関わらず、HDRで保存するときはHDRI optimized outputにチェックを入れてレンダするのがベターというわけだ。

果たして。

これだけ照度に差があるシーンだと、ガンマコレクションとトーンマッピングで歪み方にだいぶ差が出ている。明るさがレンダリングウィンドウで確認できるガンマコレクションの方が、使いやすいと言えば使いやすいかな。ちなみにガンマコレクションの方が色が強く出てるのは、自分のマテリアル組み替えミス。

まあどのみちマテリアルは画像のガンマ指定を総チェックしないといけないし、色味や彩度についてはPhotoshopでポストワークかけるわけで。そういう意味ではこういったいかにもIDLレンダって感じの画像は、HDR形式で保存するようにして調整はPhotoshopに丸投げしてもいいかもしれない。いくらでも色調補正できるし。

Poserのレンダリングウィンドウ上で、Photoshopの露光量みたいなリアルタイムな調整ができたら一番いいのになー。



ガンマのはなし その9

2011年08月07日(Sun)

15. Poser Pro 2010のガンマコレクション

Poser Pro 2010ではリニアなんちゃら周りの三つの新機能が追加されている。レンダリングオプションのガンマコレクション、テクスチャマネージャのガンマ指定、そしてガンマノードだ。

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レンダリングオプションのガンマコレクション機能が有効なとき、Poserはすべての画像と色にガンマ補正をかける。それだけでなく、同時にレンダリング結果に対してガンマカーブをかけてしまう。

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おかげでリニアワークフローが手軽に実現でき……などと言うわけがない。理屈から言えば画像にかけるガンマ値と色にかけるガンマ値とトーンマッピングに使用するガンマ値はそれぞれ別物である。ところがこのガンマコレクション機能では一律同じ値で効果がかかってしまう上、トーンマッピングを併用すると二重に歪みをかけてしまうことになる。

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効果を計測すると、輝度1.0を最大値としたカーブをかけていることがわかる。他にゲインを調整するような機能はないので、ガンマコレクション機能を使うときは従来のLDRの範囲内でライティングを行うことになる。つまり白飛びに対してはライトを抑制するしかない。正直なんの意味があるのかと小一時間(ry

さらに、この機能はすべてのイメージマップノードに対して補正をかけるため、画像を使用しているその他のノード、拡散値や鏡面値、透明度やバンプに対しても影響を与えてしまうことになる。またもともとリニアデータであり、補正をかけるべきではないHDR画像にも補正がかかってしまう。

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これを回避するには、テクスチャマネージャに追加されたガンマ指定の項目で「Use Gamma value from Render Settings(レンダリング設定のガンマ値を使う)」ではなく「Custom Gamma value(カスタムのガンマ値を使用する)」を選択しておく。

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ガンマコレクション機能が有効なとき、カスタムが選択されている画像は個別のガンマ値で補正される。補正をかけたくない画像はここで1.0を指定すればいい。また、ガンマ補正とトーンカーブのガンマ値を別々に調整したい場合は、すべての画像のガンマ補正をカスタムで指定し、レンダリングオプションのガンマ値をトーンカーブの調整用に使えばいい。例えばトーンマッピングを併用するならレンダリングオプションのガンマ値は1.0にする。

ちなみにテクスチャマネージャはイメージマップノードごとに独立しているわけではなく、画像ごとに共通しているらしい。なので同じ画像をあるマテリアルでは2.2に、別のマテリアルでは1.8に補正する、といった使い方はできない。一つの画像を拡散色とバンプで使い回しているような画像は、ガンマ値の指定をどちらかに合わせて、片方は数値演算色ノードで補正する必要がある。正直なんの意味があるのかと(ry

三つ目の新機能、Mathカテゴリに追加されたGammaノードは、いわば累乗に特化した数値演算色ノードだ。指定した色にガンマ値を累乗した値を出力する。Inverseにチェックを入れると指定した値の逆数を累乗する……のだが、自分の環境下では動作がどうも不安定で、レンダリング途中で必ず止まってしまう。素直に数値演算色ノードを使った方が安全っぽい。正直なんの意(ry

ちなみに、ガンマコレクション機能は色と画像にしか働かない。なので、今までは拡散色に50%グレーを指定するのと拡散値に0.5を指定することは同じ意味だったが、ガンマコレクションを使用すると異なる結果になる。マテリアルを組むときは注意しよう。

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16. Poserとリニアワークフロー

それでは、これまでのまとめとして実際にシーンを作ってみよう。Poser 8を使う場合は、イメージマップノードまたは色の手前に数値演算色ノードを挟み、トーンマッピングをかける。Poser Pro 2010を使う場合は、他にガンマコレクション機能を使う方法がある。

まずはPoser 8を使ってHDRIな拡散IBLライトを使う場合。

最初は普通にシーン作り。P8基本小道具のStudioBackdrop(日本語訳は不明)をロードし、フィギュアを配置してポーズを取らせる。

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シーンが使い回しなのは省エネである。モデルが暑苦しい兄ちゃんなのは、きれいなおねいちゃんが見たかったら各自頑張るようにという心遣いである(嘘)。

次にマテリアルをリニア仕様に変更する。カメラに映る全マテリアルを見直して、拡散色や代替拡散に接続されている画像の手前に数値演算色ノードを挟み込む。

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DAZフィギュアの細分化されたマテリアルグループを見ると発狂しそうになるけど、ここはぐっとこらえてやり遂げよう。自分はマテリアルグループを統合したフィギュアを使っている。

で、シーンができたら影なしテスト品質でとりあえずレンダしてみる。画像や色が補正されているので通常より暗くて濃い状態になっている。

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続いてライトを設定する。ライティングについては何度も書いてるけど、基本はとにかく1灯ずつ設定していくこと。これを守っていればIDLだろうがIBLだろうがそんなに難しくない。出来合いのライトセットを利用する場合も、せめて1灯ずつレンダして効果を確認するぐらいの習慣は付けよう。まあ効率や上達を求めてないなら余計なお世話だけど。

というわけで0灯レンダ。

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この時点で赤黒い人影が映ってる人は、マテリアルを見直そう。詳しくは過去記事参照のこと。

問題なければ1灯をオンにして拡散IBLに、色は白、強度を1に指定する。で、PoserランタイムのTexturesフォルダからHDRVFX>HDRVFX_pond_01_v_002a.hdrを指定しよう。HDR画像なので、マテリアルルームでライトノードのIBLコントラストを1に修正するのを忘れずに。

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そのままレンダしたところ。

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トーンマッピングにチェックを入れ(Exposureは初期値)、IDLをオンにしてレンダ。明るさが確認できればいいので、レンダサイズや品質はざっくり落としておくこと。ここでぐぐっとリアルっぽくなる。

これだけでは物足りないので、キーライトを追加しよう。拡散IBLライトをオフにして、代わりに白色の無限光を1灯オンにする。IDLは切って、影を確認しながらキーライトの角度を決める。

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だいたいの位置が決まったら、拡散IBLライトとIDLを再度オンにしてテストしてみよう。

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トーンマッピングを有効にしていれば大抵は色飛びしないものの、明るい階調が失われがちだ。バランスを見ながらキーライトとフィルライトである拡散IBLライトの強度を調整しよう。

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だいたいこんな感じ。屋内スタジオのピンナップなら、無限光またはスポット1灯+拡散IBL1灯で、強度もほぼ決め打ちであっという間に完了する。

では、Pro 2010のガンマコレクションを使用する場合。

ここでは拡散IBLライトではなく、ライトドームのような全天を覆う小道具で環境光をライティングしてみよう。使用するのはStonemasonさんのVillage Courtyard。セットにスカイドームがついていて、テクスチャをそのまま天空光の成分に使用できる。

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適当にカメラアングルを決めたら、影も形も映らないパーツはサックリ削除してしまう。で、まずはマテリアルの総点検だ。

前述のように、そのままガンマコレクション機能を使うとすべての画像が一律2.2で補正されてしまう。なのでまずはすべてのイメージマップノードについてテクスチャマネージャを表示し、色に使われる画像はカスタム指定の2.2、それ以外の画像はカスタム指定の1.0に変更する。面倒臭いが、これを怠ると色以外の値、バンプやディスプレイスメント、トランスマップなどの効果が変わってしまうのできちんと確認しよう。同じ画像は他のマテリアルでも修正されているのが唯一の救い。

そんなの適当でいいや、という人はそもそもリニアなんちゃらを取り入れる必要もないわけで。

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マテリアルの総点検が済んだらシーンを保存して、ライトドームのマテリアルを変更。

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ライトドームは空全体から降り注いでいる天空光を表現するものなので、まずテクスチャを環境色に接続。環境値はひとまず1にしておく。またライトドームは陰影付けされるものではないないので、拡散値は0となる。拡散色にノードをつないでいるのは、単にプレビューで見えるようにするためである。また、念のため特性パレットで影が落ちない設定になっているか確認しておこう。

まずは0灯レンダ。

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次にガンマコレクションにチェックを入れ、IDLでレンダ。

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ライトはすべてオフだが、ライトドームの影響で夜明け前のような薄暗い状態になっている。目標の日中にしては暗すぎるので、ライトドームの環境値を上げて明るさを調整。目安は日陰の明るさ、またはそこだけ太陽が雲に遮られたような明るさを目指す。とりあえず環境値を1.5にしたところ。

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明るさを確認したいだけなので、時間のかかる植物などは非表示にしておこう。次に太陽光を設定する。白色またはやや黄味を帯びた無限光で、影はレイトレース。ライトドームを非表示にし、まずはIDLなしでレンダ、ライトカメラも活用しながら影の位置を確認しつつライトの向きを決定する。もちろんガンマコレクションはずっと有効にしておく。

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だいたいの位置が決まったところで、IDLをオンにしてライトの強度を確認する。まずは1.0から。

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これも日中の日差しにしては弱すぎるので、色飛びしないよう気をつけながら強度を上げていく。

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強度を1.5にしたところ。天空光がないと、なんか宇宙空間みたいな感じ。

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ライトドームを表示したところ。調整が済んだら、影に少しだけぼかしを入れて本番レンダする。

110807-26-1 (クリックで生レンダサイズ)

もうちょっと明るくてもよかったかな。昼というより午前中な感じ。

IDLを使うメリットはとにかく「ライティングが楽!」ということだろうか。屋外・室内どちらにも応用が利くし、ちゃんと光が回り込んでくれるので、モデルさんにライトをほいほいと当てていく感覚でライティングできる。難点はとにかくレンダ時間がかかること。特にPoserは透明度のあるマテリアルの計算がネックなので、テストレンダでいかに負荷を省略するか、また本番レンダを繰り返さないよう念入りにテストできるかが勝負どころ。

リニアなんちゃらのメリットは、美しくない色飛びを抑えながら中間調を持ち上げることができること。今まで神経をすり減らしながらライト強度を上げていたのが、すんなりと調整できるようになる。デメリットはなんといってもマテリアルを見直さなければならないこと。単純に2.2をかければいいという代物でないことは、もう十分わかってもらえたと思う。


さて、長かったガンマの話もこれでようやく終了である。ブラウン管テレビから始まって、カラープロファイルやらランバートシェーディングやら色々寄り道しつつ、なんとかリニアなんちゃらまでたどり着くことができた。自分の書いてきたことが、すべての人にすぐに役立つとは思ってないし、誤りがないとももちろん思わない。けど、これから先調べものをする人の、判断材料の一つなれたらいいなとは考えている。なので、そういやこのへんにまとまった記事があったなあ、ぐらいに心に留めておいてもらえれば嬉しい。

なんか今年一年分のTips記事を書ききった気分なんだけど、たぶん錯覚なんだろうなー。





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